コラボレーションを成功させるチームが実践する4つの戦略
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サマリー:職場での多様性や分断が進むいま、効果的なコラボレーションを行うには戦略が欠かせない。筆者らは、心理学の研究や異文化コンサルティングの経験などを通して、筆者らのアカデミックな知見と実務の経験を組み合わせ... もっと見るることにより、目覚ましい成果を上げているチームが実践している4つの点を見出した。本稿では、コラボレーションを成功させるチームが実践している4つの戦略を紹介する。 閉じる

組織の縦割り問題を乗り越え、コラボレーションを促進する戦略

 職場における働き手の多様性が高まり、人々の間の分断も深まっている時代にあって、効果的なコラボレーションの実現は過去になく難しい課題に感じられている。

 近年は、5つもの世代が同じ職場で一緒に働くケースが出てきているうえに、政治イデオロギーの分断も深刻化しており、しかも国境を越えてハイブリッドワークで勤務する働き方が当たり前になっている。その結果、職場での協力を促進し、働き手のエンゲージメントを向上させ、複雑な問題を解決するために、リーダーにはこれまでよりも質の高い戦略が求められるようになった。

 筆者の一人(ヴァン・バヴェル)は、これまで20年以上、集団の心理学について研究してきた。もう一人(クリスカ)は、異文化コンサルタントとして、30年間にわたり、世界の4つの大陸でビジネスを行う数々の大企業に助言し、チームワークの妨げになる障害を明らかにして、それを乗り越える手助けを行ってきた。筆者ら2人のアカデミックな知見と実務の経験を組み合わせることにより、目覚ましい成果を上げているチームが実践している4つの点を見出すことができた。

 最近、クリスカはヴァン・バヴェルが率いるニューヨーク大学のチームに、いつも顧客企業に対して用いている双方向型のシミュレーションを体験させた。このシミュレーションでは、参加者をいくつかの小グループに分けて、それぞれのグループがある課題を完了させ、そのうえで他の小グループとともに完全に実用可能な「チームマシン」を構築させる。狙いは、組織の縦割りの壁を乗り越えてコミュニケーションを取り合い、課題を締め切りに間に合わせ、素早くソリューションを見出すなど、日々のコラボレーションで直面する問題を再現することにある。

 ニューヨーク大学のヴァン・バヴェルのチームは、企業のチームに比べて半分の時間で「チームマシン」を完成させた(そもそも、企業では4分の3のチームが完成までこぎつけられない)。なぜアカデミズムの世界のチームは、ビジネス界のチームを上回る成績を上げられたのか。その理由は、以下で述べる4つの戦略を実践していたことにある。

高次の目標に集中する

 チームワークを成功させるうえで最大の障害は、内部のいがみ合いだ。社内政治や相互不信により、セールス部門とマーケティング部門が情報を共有しないのは、その典型例といえる。縦割りの問題はいまに始まったものではないが、グローバル化の進展とリモートワークの拡大により、近年はその問題がいっそう深刻化している。

「チームマシン」のエクササイズでは、アカデミズムの面々はすぐに、完全に稼働可能なマシンをつくることが最終目標だと理解した。そこで、それぞれの小グループは自分たちの課題を終えるとただちに、他の小チームに助けの手を差し伸べた。その結果として、競争意識ではなく仲間意識が育まれていった。

 現実世界でも、リーダーは、常に高次の目標──縦割りの壁を越えて協力し合わなければ達成できない共通の目標──を明確に示し、その目標をメンバーにはっきり伝えることが重要だ。そして、全体としての成功が実現した場合に報酬を提供したり、個人単位や部署単位の取り組みがどのように全体の成功に貢献するのかを示したりすることも必要となる。