CRM導入企業の55%が何ら成果を上げていない

 1998年、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)に着手したモンスター・ドットコム(以下モンスター)は、この新しい戦略が新たな利益を生み出すだろうことに一抹の不安も抱いていなかった。

 同社はマサチューセッツ州を本拠地に人材斡旋業を営んでいるが、ソフトウエアのカスタム化に100万ドル以上の資金を投じて、そのIT(情報技術)システムを全社的に統合することに踏み切った。それもこれも営業部門の効率アップを図るためだった。

 この時に導入されたCRMアプリケーションは、モンスターの営業スタッフが見込客のデータに瞬時アクセスできるように、特別に開発されたものである。

 ところが、いざ使ってみると、その稼働速度は問題にならないほど遅く、しかも現場の営業スタッフが自社のデータベースからノートパソコンに顧客情報をダウンロードできないというありさまだった。何しろダウンロードしようとするたび、コンピュータがフリーズするというのだから話にならない。

 最終的にモンスターは、ITシステム全体を再構築しなければならなかった。その結果、何十億ドルもの大金をドブに捨てただけでなく、顧客や社員のロイヤルティも大幅に損ねてしまったのである。

 CRMの謳い文句はたしかに魅力的だが、実際問題としては、リスクの伴うことが多い。

 もちろん、成功すればその御利益は絶大だ。具体的には、顧客データは迅速に収集され、長期的には最重要顧客となる層を見極められるだけでなく、顧客一人ひとりの要望に応じて製品やサービスを仕立て、顧客ロイヤルティが高まる。

 同時にCRMは、顧客サービス関連コストの削減にも貢献し、類似の属性を持った潜在顧客の獲得をも容易にするという点も見逃せない。