企業が複雑化する政治情勢に対処する4つの戦略
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サマリー:中南米で事業を展開する企業は、ますます複雑化する政治情勢に直面している。もはや、現政権の国家指導者との緊密な関係性に頼ることはできない。その代わりに、リスクを管理するためのよりよい戦略が求められている... もっと見る。本稿では、予期せぬ混乱に対処し、持続可能な事業運営を維持するための4つの戦略を解説する。 閉じる

中南米のビジネスにおけるリスク

 2023年10月、世界最大級の露天掘り銅鉱山の運営会社であるカナダ資源開発大手ファースト・クォンタム・ミネラルズ(FQM)は、パナマ政府との銅山採掘契約交渉で、大きな挫折を味わった。契約内容に憤慨し、環境破壊を懸念した地元住民が、国全体をマヒさせるほどの抗議行動を展開して閉山を要求したのだ。

 経営陣は有力政治家と密接な関係を構築していたが、それでも混乱を収束させることも、パナマ最高裁判所が抗議者側を支持することを阻止することもできなかった。FQMが、数十億ドル規模の訴訟をちらつかせても、状況は少しも動かなかった。2023年末の1トンの銅生産を最後に、鉱山は稼働を停止している。

 従来のリスク管理マニュアルに従えば、FQMは適切な対策を講じていたように思われた。パナマ政府当局にロビー活動を行い、自社のビジネスを守るために完璧な国際仲裁条項を定めていたのだ。それでも採掘を維持できなかったことは、複雑化する中南米の政治情勢を浮き彫りにしている。この地域で時代遅れの経営戦略に固執する企業は、即座に行き詰まり、大きな損失に直面するだろう。だからといって、急成長を遂げているこの地域への投資を避けることは近視眼的だ。そうではなく、この進化する環境にどのように関与し、適応するかをリーダーは考えるべきだ。

 2018~2022年、中南米諸国で行われた選挙の79%で、政権与党が敗れた。つまり企業としては、政治的な同盟に頼ってもビジネス環境の長期的な安定は保証されないということだ。政権与党へのロビー活動や、高額な仲裁手続きによって解決するという従来の戦略は、より積極的なリスク管理戦略によって補完する必要がある。中南米諸国に進出する企業は、リスク管理のツールキットに4つの重要な戦略を盛り込む必要がある。

積極的なソーシャルメディアモニタリング

 多くの企業がすでにソーシャルメディアをモニタリングしているが、自社ブランドのメンションに注目しがちだ。しかしこの受動的なアプローチでは、中南米で増大する政治的不安定を効果的に管理することはできない。