脱炭素化を目指す企業が直面する25の課題と解決策
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サマリー:企業リーダーは、ネットゼロの目標達成に向けて戦略を模索しているが、現在のエネルギーシステムの物理的な変革が難しいという課題に直面している。2050年までにグローバル目標を達成するには、いまだに導入されてい... もっと見るない低排出技術の90%を形にする必要がある。本稿では、筆者らが明らかにした、エネルギー転換を成功するために克服すべき25の重要課題について解説する。 閉じる

物理的な変革を実行しなければならない

 地球の温暖化が続き、大洪水や熱波などの気候リスクへの懸念が高まる中、世界のリーダーたちがアゼルバイジャンのバクーに集まり、COP29で気候に関する議論を再開する(編集部注:COP29は2024年11月11日から22日の会期で開催された)。企業にとっては、気候変動対策が今後の自社戦略にどのように影響するか──特に世界的な不確実性の高まりを前にして──が最大の懸念事項である。企業リーダーたちは、自社のネットゼロ目標をどのように達成し、世界が現在の大量排出システムから脱炭素化を目指す中で、どのように自社のビジネスにもたらされる機会とリスクに対応すべきかを検討している。

 この議論でしばしば見落とされるのは、現在のエネルギーシステムを支える複雑な物理的資産を変革することの難しさである。現在のシステムは1世紀以上にわたって最適化され、高いパフォーマンスを実現してきたものであり、世界経済に深く組み込まれ、何十億もの人々の生活を支えている。

 現在、この変革はまだ初期段階にあり、困難な作業の多くが残っている。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートの調査によると、2050年までにグローバル目標を達成するために必要な低排出技術のうち、現在までに導入されたのはわずか10%程度である。残りの90%については、新たな資産の構築や、新たな物理的課題への取り組みが必要である。

 エネルギー転換とは何よりもまず物理的な変革であるという認識は、抽象的なネットゼロ化シナリオで見失われかねない真実である。新しいエネルギーシステムが現在のパフォーマンスを維持あるいは改善し、手頃な価格、信頼性、競争力を備えたネットゼロへの道筋となるためには、物理的な変革を避けて通ることはできない。

エネルギー転換における技術とインフラの25の重要課題

 必要な変革を明確にするため、筆者らのチームはエネルギー転換を成功させるために克服しなければならない「基本的な要素」に関する、おそらく最初となる包括的な評価を実施し、25の重要な物理的課題を明らかにした。これらの課題は、低炭素技術の開発や導入だけでなく、変革が必要なサプライチェーンやインフラにも関連している。

 課題は、エネルギーシステム全体にわたって存在する。たとえば、太陽光や風力発電に内在する変動性への対応、セメントや鉄鋼など産業用材料の低炭素製造法の模索、電気自動車(EV)の可能性を最大限に引き出すギガファクトリーや充電スタンドなどのサプライチェーンやインフラの構築など多岐にわたる。

 この評価では、企業が自社の脱炭素化を進める中で直接、またはサプライヤーや顧客を通じて間接的に直面する課題を明らかにしている。もちろん、これらの課題は、市場が商業的なソリューションを求めるという意味で、ビジネスチャンスの地図とも読み取れる。