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チームメンバーによる指揮系統の無視にどう対処するか
非営利団体の上級幹部で筆者のクライアントでもあるジョンは、直属の部下のアレックスとの思いがけない問題に直面していた。組織最大の資金調達イベントの最中に、アレックスが「指揮系統」を何度も無視するという、憂慮すべき傾向にジョンは気づいた。アレックスは従来の報告体制に従わず、ジョンの上司に直接進捗状況を伝えたり、フィードバックを求めたりした。状況はエスカレートし、外部の主要なパートナーから、ジョンが把握していない計画の変更を聞いた。その瞬間、ジョンは重要なパートナーからの信頼を失いつつあることと認識し、プレッシャーが高まった。
ジョンのようなリーダーにとっては、このように境界を越えられると、経営コンサルタントのスティーブン・コヴィーが「効果的なコミュニケーションに最も必要な要素」とした、チームの結束、パフォーマンス、信頼に対する直接的な打撃のように感じられる。ジョンのチームがヒエラルキーを無視していることで、信頼が損なわれ、さらに深い問題も示唆された。コミュニケーションの断絶、不明確なプロトコル、役割と責任の誤解だ。硬直した「指揮統制型」のリーダーシップは、より協働的なアプローチに取って代わられつつあるが、構造とプロセスは依然として不可欠である。特に、規模が大きく高度にマトリックス化された組織では、連携の欠如が個人の信頼性以上に大きな影響を与えかねない。
指揮系統の無視が起こる理由
リーダーは、なぜメンバーが確立されたプロセスから外れた行動を取らざるをえないと感じているのか、一度立ち止まって考えるべきだ。その動機を理解することで、境界線を強固にし、チームメンバーのエンゲージメントを回復させる方法が見えてくる。以下が、チームメンバーがプロトコルを無視する3つの主な理由だ。
役割と責任を誤解している
指揮系統を無視する一般的な理由は、役割が明確でないことだ。チームメンバーは、自分の役割や責任、確立されたプロセスを遵守することの重要性を十分に理解していない可能性がある。彼らがアプローチよりも結果を優先する場合は特にそうだ。ジョンにとっては、それがフラストレーションにつながり、チームが指揮系統を無視することでジョンと部門横断的なチームを混乱させ、摩擦を生み、協調精神を損なうことになった。
マトリックス組織では、「同じ方向に船を漕ぐ」ことが成功には不可欠だ。マッキンゼー・アンド・カンパニーのOHI(組織健康度指数)によると、明確で責任ある役割は、組織の健全性を高める最も重要な要因の一つである。
成功指標が不明確である
チームメンバーは、成功がどのようなものかが不明確だと、早く結果を出し、注目度を高めるために、より上位の意思決定者に指導を求めることがある。明確さを求める切迫感から、彼らは階層的な境界を無視し、自身の上司を飛び越えてしまう。成功の指標が明確でなければ、そうした行動は正当化されるように感じるかもしれない。経験の浅い労働者には、このようなやり方はプロトコル違反ではなく、目標を達成するための現実的な方法と見なされる可能性がある。
プロセスよりも結果を優先する
高いリスクを伴う状況や変化の激しい環境では、チームメンバーはしばしばプロセスよりも結果を優先する。指揮系統を無視すれば仕事が早く進むと考えている場合はなおさらだ。こうした行動は、リーダーが手順に従うことの重要性を強調せず、迅速な成果を強調すると悪化する。ピーター・ドラッカーは、「効率性とは物事を正しく行うことであり、有効性とは正しいことを行うことである」と述べた。効率性がプロセスよりも優先されると、組織の構造が不要なものとして認識され、結束と信頼が弱まるおそれがある。
指揮系統を無視する行動は、チームのダイナミクスを損ない、緊張を生む。リーダーが無視されると、ヒエラルキーは任意のものであるというメッセージになり、確立された構造が尊重されなくなる。マネジャーが傍に追いやられていると感じたり、チームメンバーが一貫性のないコミュニケーションに慣れてしまったりすると、マネジャーと直属の部下との間の信頼関係が薄れるおそれがある。