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新規プロジェクトを選択する時の最適な手法
世界中の企業でよく見られるシナリオを一つ紹介しよう。年1回の新規プロジェクト提案の審査がもうすぐ始まる。あなたは意思決定委員会のメンバーだ。目の前には圧倒されそうな数の選択肢が並んでいる。メンバーが自分の専門知識をもとに意見を述べることができるものもあれば、そうではないものもある。裏づけとなる技術がまったく新しいものや、その市場でまだテストされていないケースもある。あなたたちチームは協力して、どれが最もうまくいきそうか、保留すべきものはどれかを判断しようとしている。しかし、それぞれの評価をどのように比較検討して組み合わせればよいだろうか。
このような課題は、イノベーションプロジェクトの選択に関する筆者らの新しい研究にも表れている。研究では現実的な選択環境をシミュレートして、投票、スコアリング、ランキングなど、一般的な意思決定の手法を比較した。
多くの大企業において、デバイスメーカー、ソフトウェア供給業者、製薬会社、さらにはベンチャーキャピタルなどが、革新的なアイデアと自分たちが使えるリソースをマッチングさせる必要がある際に、このような戦術を用いる。ただし、こうしたプロセスに関するルールの適用に一貫性がないため、曖昧な結果になったり、一人の経営者が最終決定を下さざるを得なくなったりすることが少なくない。
ポートフォリオの意思決定の有効性は、調査や研究が難しい。企業の時間、リソース、収益がかかっている場面で、新しい選択方法を用いて決定を再検討する余裕のあるチームはほとんどない。たとえば、選択肢に点数をつけるのではなく投票していたら、自分たちのプロジェクトのポートフォリオはどのくらいうまくいっただろうか。別のプロジェクトを選択していたか。そうした方向から考える時間は基本的にない。
そこで今回、意思決定を正しい方向に導くための価値ある洞察を提供したい。筆者らはコンサルタントおよび研究者として20年間、ハイテク企業におけるポートフォリオ選択の意思決定プロセスを研究してきた。それらの研究をもとに、意思決定モデルを設計した。こうした研究の結果を実証的に検証することはできないため、モデルの調整が妥当性の高い洞察を生み出すカギになる。モデルは数千通りのシナリオを実行し、以下に挙げる意思決定のルールをもとに選択されたプロジェクトのポートフォリオが、どのくらい成果を上げるかを検証する。
全体として、最善の方法は単純なランキングである場合が多かった。意思決定委員会のメンバーがそれぞれ、候補のプロジェクトを自分が好ましいと思う順番で並べる。その順位を集計し、予算の範囲内で、順位の高いプロジェクトに資金を投入していく。このルールでは予算、専門性、プロジェクトの概要に応じて、単純な投票で選ばれたものより平均で10~20%パフォーマンスが高いポートフォリオが選ばれる。ランキングを採用すると、イノベーションの選択において、意思決定委員会が共有する視点を有効に活用しやすくなる。
プロジェクトの選択は一般にどのように行われるか
新しいイノベーションプロジェクトを選択する際に、合意形成を重視する委員会は、成功が明白なアイデアだけに資金を提供することになる。そうしたアイデアは、漸進的なイノベーションになりがちだ。一方で、次のブレークスルーを狙うベンチャーキャピタリストは反対のアプローチを取り、意見が分かれるプロジェクトを選ぶ傾向があるだろう。
筆者らの研究は、コストのかかる失敗と機会損失を避けることの両方を同じくらい重視する中立的な意思決定ルールに注目した。