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秘密保持が従業員に与えるコストとメリット
国家安全保障機関からテクノロジー企業、法律事務所、医療機関まで、多くの職場において、秘密保持は日々の必要不可欠な業務となっている。こうした組織の持続可能性は、多くの場合、機密情報を詮索の目から守れるかどうかにかかっている。それを怠ると、莫大なコストを支払うことになりかねない。たとえば、米国企業は営業秘密の窃盗を含む知的財産権の侵害によって、年間2250億から6000億ドルの損害を被っている。
企業が秘密を守るのは、こうした貴重な知的財産権を保護し、競争優位を確保し、従業員とクライアントのデータを保護するためである。だがその一方で、秘密保持を課せられた従業員のウェルビーイングに深い影響を及ぼしかねない。
最近、筆者らはさまざまな業界の1万2000人の従業員を対象に調査を実施し、組織のために秘密保持を課せられた従業員のウェルビーイングのコストとメリットの両面を明らかにした。また未発表のフォローアップ研究では、コストを最小化しメリットを最大化するために、マネジャーが自分の裁量で行える手段を提示している。
企業秘密はストレスを与え、意義も与える
一般的に、企業秘密は企業の戦略的利益に結びつく秘密と定義される。そこには、専有情報や機密性の高いビジネス戦略に関する情報、秘匿性の高い従業員データなどの保護も含まれる。個人的な秘密は自発的に守って個人的に開示するものだが、企業秘密は多くの場合、経営者から命じられるものであり、競争優位や法的コンプライアンス、セキュリティの維持に不可欠である。企業秘密を漏えいした時のリスクは高く、失業したり、訴訟になって高額の賠償の判決を受けたり、拘禁刑を受けることさえある。
筆者らの研究から、企業秘密を守ることは従業員のウェルビーイングに2通りの影響を与えることが明らかになった。まず、職場で秘密を守ることに従業員は孤独やストレスを感じ、ウェルビーイングに好ましくない影響を受けることがある。従業員は周囲との隔たりを覚え、職業生活の重要な部分を共有できないと感じ、ストレスが高まって日常の満足感がしばしば低下する。
その一方で、企業秘密を守ることでステータスやパーパスの意識が植えつけられ、従業員のウェルビーイングが向上することもある。機密情報を託されるということは信頼と重要性の表れであるため、従業員は自分に価値があり、自分は組織の成功に不可欠な存在なのだと感じる。この重要性の意識によって、自分は意義のある仕事をしているという認識が強化される。
では、企業秘密の保持という任務において、どの側面がステータスと意義の感覚を高め、孤立とストレスの感覚を緩和するのだろうか。
筆者らはその問いに答えるために、機密性の高い企業秘密を守ることを求められているフォーチュン500の2920人の従業員にフォローアップ調査を行った。