生成AIで体系的に価値を創出するフレームワーク
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サマリー:多くの企業が生成AI活用による価値創出を競っているが、技術の進歩に比べ、企業がその価値を引き出すケイパビリティを有していることは少ない。多くの企業では、明確な戦略や計画が不足し、従業員に生成AIを使わせる... もっと見るだけで効果を期待するケースが目立つ。著者らは、企業に対する効果的なAI活用スキルの開発を支援し成果を上げるための「生成AI価値創出ピラミッド」の使用を提案する。 閉じる

生成AI技術の進歩に戦略が追いついていない

 2023年3月にチャットGPTの法人向けサービスが公開されて以来、あらゆる規模や業種の組織が生成AIによる価値の創出を競い合っている。この技術自体の能力は急速に進化しているが、価値を実現する能力は、大半の企業でほとんど向上していないか、まったく進歩していない。

 生成AIを活用して価値を創出し、獲得するために、一貫した戦略を構築している組織はほとんどない。したがって、大半のプログラムに構造や計画が欠けているとしても驚くことではない。多くの場合、生成AIサービスへのアクセスを取得し、その技術を従業員が利用できるようにして、後は最善の結果を期待しているだけだ。

 しかし、もっとうまくできるはずだ。筆者らは複数の企業とともに、生成AIと効果的にコラボレーションするために必要なスキルを開発する支援を精力的に行ってきた。その過程で開発したのが、シンプルなツール「生成AI価値創出ピラミッド」だ。このツールはすでに、筆者らの多くのクライアントが短期間で大きな進歩を遂げるのに役立っている。

生成AI価値創出ピラミッド

 漸進的な生成AIと変革的な生成AIの違いは、技術の洗練度や戦略的ビジョンではなく、何が組織のパフォーマンスを向上させるかという共通理解にある。このピラミッドは、生成AIの成熟度を評価し、AIから価値を創出して獲得するために必要な能力を構築する明確な枠組みを提供する。

 多くの組織は、まず小規模な生産性の向上に焦点を当てるが、市場のリーダーは4つのレベルの能力を通じて体系的に価値を構築する。すなわち、個人の能力向上、集合知、変革と成長、先見性のあるイノベーションである。

 各レベルは、それ以前に獲得した能力をもとに構築される。各レベルについて見ていこう。

個人の能力向上

 研究が示す通り、個人は比較的、短期間で能力を向上させることができる。カスタマーサービス担当者、ソフトウェアエンジニア、データサイエンティストなどの専門職を対象とした研究から、生成AIは最小限のトレーニングで生産性を大幅に向上させることがわかった。