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どの段階で生成AIの助けを借りるべきか
生成AIの助けを借りて文章作成をすることで、驚異的な生産性が期待できると考えると、生成AIは抗いがたい魅力を持つツールである。ある実験的研究によれば、プロフェッショナルがチャットGPTを利用すると、文章作成の作業スピードは50%向上し、文章の質も高まるという。
さまざまな形態の文章作成にどれほどの仕事時間が費やされているかを考えると、AIを活用した文章作成がいかにして過剰な負担や働きすぎといった問題の解消に役立つのかがわかる。2023年のマイクロソフトのリポートによると、プロフェッショナルは労働時間の3分の1をメールやテキストメッセージの執筆に充て、メモ取りや、プレゼンテーションおよび文書の作成にもう3分の1を費やしているという。
とはいえ、メールやリポートの作成でAIに依存することには、たとえ最初の下書きであっても落とし穴がある。ボットによる言葉の選択によって、本来のあなた固有のトーンが失われやすくなり、また生成AIは「ハルシネーション」(AIが事実に基づかない情報を生成してしまう現象)やエラーを引き起こすこともよくある。また、どういう場合にボットを信頼すべきか、どうすればプライバシーの侵害を避けられるか、ボットの使用によってあなたの努力の価値が低く評価されないかなど、考慮すべき倫理的な境界線がある。
グーグルは2024年のパリ五輪で、父親が幼い娘のために同社のボットを使ってオリンピック選手を激励する手紙を書くという広告を流したが、大きな批判を浴びてこの動画の放送を中止した。仕事の文章作成にAIを利用することによって、同僚との信頼関係、ひいては自分のプロフェッショナルとしての権威が傷つくのではないかと、多くの人が恐れるのも不思議ではない。
しかし、こうした落とし穴は回避できる。筆者は長年、職場のデジタル化について研究と執筆を重ね、人々や組織がデジタルツールを利用して効率を向上させつつ人間的なつながりも形成できることに注目してきた。生成AIのサポートを利用した文章作成も同様である。
大切なのは、生成AIに文章作成の手伝いはさせても、自分の代わりに書かせないという一線を引くことだ。哲学者のリチャード・メナリーが述べたように、書くという行為は思考を深め、発展させる。だからこそ、あなたの関与が必ず不可欠なのだ。文章作成のツールとしてAIを賢く使えば、あなたは書くことにも思考することにも上達し、AIにたやすく取って代わられる存在ではなくなるだろう。
そのためには、文章作成作業のどの段階においても、生成AIをあなたの代わりとしてではなく、サポート役として活用する必要がある。
AIを活用した文章作成に着手する前に
AIを活用した文章作成に着手する前にまず、あなたの組織のAIポリシーを確認しよう。使うべきツールや、センシティブな情報を誤って漏えいするのを防ぐ方法について指針があるはずだ。