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経験のない大規模投資をいかにマネジメントするか
かつて経験したことのない設備投資の波が押し寄せている。AIや生成AIが激しい勢力争いを繰り広げるなか、巨大テクノロジー企業は必要なデータセンターやインフラ構築に莫大な資本を投下している。
ゴールドマン・サックスの予測では、データセンター需要を満たすための設備投資額は2030年までに1兆ドルを超える可能性が高い。バンク・オブ・アメリカは、グローバルサプライチェーンの再編によって工場の大規模な成長とロジスティックス・ネットワークの再設計が進み、さらに1兆ドル規模の投資を呼び込むと指摘している。また、国際エネルギー機関(IEA)によれば、ネットゼロエミッション目標の実現に必要なクリーンエネルギーや関連テクノロジーへの投資も、現在の2兆ドルから2030年までに5兆ドルに増加する見込みだという。
どこからどう見ても巨額の投資だ。しかも、過去数十年間の設備投資の実績に基づいて考えると、この投資が、期待に沿うだけの価値や、プロジェクトを完了させられるほどの価値を生み出すとは限らず、リスクは極めて大きい。通常業務で十分な実績を上げてきた企業でも、この手の大型かつ複雑なプロジェクトには苦戦する。大規模な設備投資プロジェクトには多層的なマネジメントが求められ、過去の経験がそのまま通用するとは限らないためだ。
巨額の費用を投じるからには、企業は設備投資プロジェクトに内在するリスクを最小限に抑え、期日までに、予算の範囲内で、そして目的を達成する形でプロジェクトを実現させる必要がある。しかし、いったいどのようにそれを行えばよいのだろうか。
設備投資プロジェクトを成功させる3つの柱
筆者らの経験から言えるのは、企業が伝統的なアプローチとは大きく異なる方法を採用すれば、設備投資プロジェクトの成功率を劇的に高められるということだ。そうした代替アプローチには、以下の3つの柱が必要となる。
1. 設備投資プロジェクトを、互いに関わり合う複数の活動を統合した「サプライチェーン」として管理する
2. 方針転換が困難かつ高コストとなる重大な決定を先送りすることで、柔軟性を設ける
3. プロジェクトの全期間を通して、アウトプット指標ではなくインプット指標に注目する