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ユーザーの自発的貢献によって
競争優位を築く
私は先日、インテュイットの幹部70人と共に、一室で緊迫した半日を過ごした。社外の人々の自発的な時間と労力、経験を、我々の顧客の生活を向上させるために活用するにはどうすればよいのか、その方法を考え出すことが目的であった。
奇妙に聞こえたかもしれない。しかしあなたの組織でこのような試みがなされていないとすれば、それは、ビジネスを一変させるような大変革の波のなかで、せっかくのチャンスを逸しているといえる。
何百万人という人々が企業のために、たとえばしかるべき情報に裏づけられた意見、PCの余剰能力など、さまざまな貢献を自発的に果たし、その企業の顧客、そして結果的にその株主のために多大な価値を創出している。
数年前、最初にこの概念に遭遇した時の印象は、何ともとらえどころのないものだった。ボランティアは慈善行為のためであり、利益を旺盛に追求する企業のためになされる行為とは考えられなかったからだ。
しかし、この驚きは始まりにすぎなかった。やがて私は、ユーザーの自発的貢献が、世界でも最も成長著しく、高い競争優位を築き上げた組織の機動力となり、コスト構造を大幅に縮小することで、業界全体の経済に大変革をもたらしつつあることに気づき始めたのだ。
まさしくイーベイがそうである。同社は、在庫ゼロの状態からオンライン店舗をオープンし、売るべき商品を「棚」に補充する作業を顧客たちに任せている。ウィキペディアもしかりだ。無報酬のアマチュアたちが頻繁に書き込み、更新可能な百科事典を無料で提供することで、230年の歴史を誇る『ブリタニカ国際大百科事典』のバリュー・プロポジション(提供価値)を骨抜きにしている。
貢献をさほど意識させずとも、バリュー・プロポジションの中核にするケースもある。無料のインターネット電話サービスを展開するスカイプ・テクノロジーズが、そのために負担している資本コストはほぼゼロである。同社は、顧客のPCで使用されていない処理能力を使ってシステムを構築しているからだ。
グーグルの事業も、ユーザーの貢献がその基盤になっている。グーグルの検索エンジンは、他者がウェブサイト間につくり上げたリンクを集約したアルゴリズムに依存しており、同社の広告配信システムは人々のクリック行動から得たデータに基づいている。