CEOは孤独をいかに軽減すべきか
Siri Stafford/Getty Images
サマリー:世間では、CEOは孤独に違いないと認識されているものの、その実態を明らかにした研究はほとんどない。そこで筆者らは、カナダの主要な組織のCEOに対象にアンケートとインタビューを行い、その実態を調査した。本稿で... もっと見るは、筆者らの調査に参加したCEOたちの証言を交えながら、孤独の痛みを和らげ、ネガティブな感情の悪循環を防ぐ6つのコツを紹介する。 閉じる

これまで明らかにされてこなかったCEOの孤独

 トップに立つ者は孤独である。頭にいただく王冠は重い。高みに達するほど孤独が募る──。このような使い古された常套句は、CEOは孤独に違いないという世間の認識をよく表現している。脳裏に浮かぶのは、オフィスの最上階でたった一人、四半期ごとの売上データを見つめながら、失望の表情を浮かべるCEOの姿だ。だが、そうしたイメージは本当に現実を反映しているのだろうか。

 CEOの孤独について知られていることは皆無に等しく、学術的研究もほとんど行われていない。それも無理はない。そもそもCEOには、好奇心旺盛な研究者のために時間を割く余裕はなく、しかもみずからの弱さを公言することで失うものも大きいからだ。

 彼らの実態を探るべく、筆者らはカナダの主要な組織のCEO165人に調査票を送付し、107人から完全な回答を得た。そのうえで、46人のCEOにインタビューを行い、結果を補完した。なお、CEOへのアクセスは、CEOの役割を研究し、研究者とCEOが共同運営するHEC経営大学院モントリオール校の研究センターを通じて実現した。

 筆者らの狙いは、CEOが孤独を感じた経験について知り、その感情がどこから来るのか、孤独とどう向き合っているのかを掘り下げることだった。この調査結果は、経営陣が経験する複雑な感情と、孤独への対処法に新たな光を当てることになるだろう。

孤独が生じる状況

 孤独は通常、みずから望んだわけではないのに孤立していたり、親密な人間関係を持てなかったりする状態を指すと考えられている。しかし、よく考えてみると、CEOはそのどちらにもあまり当てはまらない。彼らの大半は有能なネットワーカーであり、コミュニケーション能力に長けていて、同僚や部下から常に注目を浴びている。意義深い人間関係を持てていないどころか、複雑な社会的ネットワークの中心で活動している人々なのである。それなのに、なぜ彼らは孤独を感じるのだろうか。

 答えはこうだ。CEOには多くの社会的つながりがある一方、リーダーとしての責任が肩に──それも、自分の肩だけに──重くのしかかる。CEOの意思決定は組織全体に影響し、日々、一人ひとりの未来を書き換えていく。

 戦略を維持したり、士気を保つために、情報や洞察を周囲と共有できないCEOも多い。さらに彼らは、ピラミッドの最上位にいるため、人間関係にヒエラルキーが入り込んだり、同僚を単に目的達成の手段と見なす関係になってしまいやすい。

 CEOが常に孤独を抱えているのなら、恒常的な不安や悲しみを抱えている場合と同様に、彼らの精神的健康を心配すべきだろう。しかし実際には、彼らの孤独は断続的で、常に続くわけではない。調査では、25%のCEOが頻繁に孤独を感じると答えた一方、激しくはないが、顕著な孤独感が時折押し寄せると答えたCEOが55%に達した。さらに、リーダーは冷静沈着でなくてはならないというプレッシャーによる影響で、5人に1人が、孤独の重要性を一貫して軽視していた。