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人が最善を尽くしているにもかかわらず、新たな負担や機会損失が生じている
効率的な業務、正しい意思決定、強力なAIには良質なデータが不可欠であることを、いまやほとんどの企業が──少なくとも知識としては──知っている。ところが、良質なデータの作成において人が果たす重要な役割については認識できていない。実際、多くの企業は従業員を問題の大きな一因と見なし、注意不足、新しいスキルを学ぶことへの抵抗、職が奪われることへの過度の不安を非難する。
筆者らは企業に対し、データへの投資による利益向上の支援を行っているが、このような企業の態度は、筆者らが目にする様子とは一致しない。むしろ従業員は、訓練と支援と指針を十分に提供されていないにもかかわらず、データの作成、使用、分析を適切に行おうと日々勇敢に奮闘しているのだ。ところが多くのマネジャーは、ほとんど無意識のうちに、データに関する従業員の正しい行動を困難にしている。
この指摘はまったくの的外れだ、と感じるマネジャーも多いだろう。結局のところ自分もベストを尽くそうと努力しており、KPI(重要業績評価指標)の達成を気にかけ、自分自身の上司からプレッシャーを受けている。部下はそうではない、というわけだ。
しかし、より詳しく検討してみれば、次のような状況に気づくかもしれない(以下はすべて実際の出来事か、またはその組み合わせである)。
シナリオ1
ある銀行の経営陣は、低賃金の現場従業員に向けて、彼らが入力するデータが事業運営においていかに重要かを教える研修を提供することを拒んだ。現場従業員の離職率が高いことを理由に、彼らへの投資を渋ったのだ。結果的にデータの品質は下がり、下流工程の従業員は自分の仕事を遂行するためにデータの修正を余儀なくされた。
シナリオ2
メアリーは財務部で長年働いているうちに、部門ごとのサプライヤーのリストに不整合があることに気づいていた。複数の部門が同じデータを異なる方法で入力していることが原因だ。また、異なる部門が同じ原材料を別々に小口で注文しており、調達を統合してまとめ買いすれば数百万ドルを節約できることも彼女は知っていた。
だが、彼女の賞与は買掛金の正確さに基づいて算出され、この問題を是正しようとすれば自分の「本業」の時間が奪われる。したがって現在のところ、この改善機会については黙っている。
シナリオ3
ある非営利組織は、サービスを提供する家族の成果向上につながる主要因の特定にデータを利用しようとしていた。ソーシャルワーカーを務めるスタッフたちは、データに関する何事にも関与したがらない。彼らは人々に奉仕するために組織に所属しているのであり、テクノロジーを使って仕事をするためではない。