なぜ人は過剰に仕事を引き受けてしまうのか
Orbon Alija/Getty Images
サマリー:キャリアの浅いプロフェッショナルは、自分をより有能に見せるために、許容量を超えたタスクを引き受ける「オーバーコミットメント」に陥りがちだ。社会や職場の期待がこれを助長し、健康や生産性を犠牲にすることも... もっと見るある。特に、自分の感情が意思決定に影響を与えることで、オーバーコミットメントの悪循環が生まれる。本稿では、筆者の研究をもとに、職場で過剰な負担を引き起こす3つの感情的な力学を解説する。 閉じる

自分を有能に見せたい人が陥るオーバーコミットメントとは

「このプロジェクトを引き受けられますか」
 できます。
「この新しいイニシアティブの指揮を執れますか」
 もちろんです。
「チームのランチを企画できますか」
 喜んで。

 イエス。イエス。イエス。

 これは数年前の私だ。療法士から、デジタルヘルス分野のスタートアップ企業に移って臨床業務を担当するようになった頃である。自分の価値を証明しようと躍起になり、自分のところに来る依頼はすべて「イエス」と答えるしかないと思っていた。

 このすべてをどうやってスケジュールに組み込むのか。どうすればよいのだろう。

 チームの誰もが、私よりデジタルヘルス分野の経験が豊富だった。彼らはスタートアップ業界の経験も長く、私が知らないことを多く知っていた。

 だから、自分の手に負えないほどの責任を引き受けることによって、自分が有能で、信頼できて、献身的で、何よりも、価値があることを周囲に示せるのだと信じていた。その時、私は理解していなかったが、このようなオーバーコミットメントは、仕事と健康の質という2つの大きな代償を伴っていた。

 そのことに気づいたのは、慌ててリポートを仕上げた後(やるべきことが多すぎたのだ)、上司から「もう少し時間をかければ、もっとよいリポートになったのに」と言われた時だ。

 何という皮肉だろう。当時の私は、もっと労力をかければ、さらに生産性が落ちただろう。しかも働きすぎて、打ちのめされ、疲労困憊するだけだった。