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組織における「学習」が重視される時代
近年、企業はかつてないほどの変化に直面している。ベイン・アンド・カンパニーの調査によれば、企業がこの変化の中で変革できるかどうかを予測する最も強力な指標は、必要な人材を採用・育成し、定着させる能力にある。
理論上は、まさにいまがその時であり、最高学習責任者(CLO)は経営の意思決定に深く関与し、経営チームとともに組織戦略を策定し、未来のニーズに合わせて従業員のスキル向上に取り組むべきである。しかし、筆者が25人のCLOにインタビューを行ったところ、現実にはギャップがあることが浮き彫りになった。約半数が、自社のCEOの最優先事項に対して部分的にしか関与できていないと感じていた。これは、人材開発(L&D)の専門家のうち、経営の意思決定に関与できていると感じる人が58%しかいないというリンクトインの最近の報告とも一致している。
では、部分的にしか関与できていないCLOたちは、自社の戦略と人材開発が深く連動していると感じているCLOたちから何を学べるのか。筆者のインタビューを通じて、彼らが取り入れることのできる5つの具体的な実践法が明らかになった。
学習プログラムの開発にアジャイルアプローチを導入する
大半の企業では、職場の大規模な学習プログラムの開発に極めて長い時間がかかっている。リンクトインの最近の報告によると、2022~24年にかけて最終段階まで進んだ学習プログラムは5%にも満たなかった。こうした開発の遅れによって、職場の学習と戦略的優先事項のギャップが広がり、ビジネスのステークホルダーのフラストレーションが高まる可能性がある。
開発のスピードを上げるために、一部の企業は人材開発プログラムにアジャイルアプローチを採用している。このアプローチでは、デザイナー、コンテンツ開発者、ビジネスのステークホルダーから成る機能横断型チームが、フィードバックとテストを重ねながら学習プロセスを継続的に改善していく。
このアプローチを採用した代表的な企業の一つが、スタンダードチャータード銀行である。同社のグローバル学習責任者であるアメリ・ヴィルヌーヴ博士によれば、同社の人材開発チームは、各事業部門に専任のアカウントマネージャーを配置する体制から、学習ニーズに応じて「あらゆる創造的な可能性を把握できる」多職種チームへと移行した。その結果、ビジネスのステークホルダーと学習機能の関係が改善された。ステークホルダーは単にリストの中からプログラムを選んで発注するのではなく、「人材育成担当チームとの診断的な対話」に加わるようになったと、ヴィルヌーヴは指摘する。「この変化により、さらに戦略的な対話が可能になった」
PwCでCLOを務めるリア・ハウドも、AIの導入を促進するためにアジャイルアプローチを採用し、それによってビジネスの優先事項に迅速に対応することができた。「最初の6カ月間は、短期間の開発サイクルで進めた」と彼女は説明する。「何が起きるか予測できない状況では、1年がかりの戦略を見直さざるを得なくなることを避けたかった」
部分的な導入でも、アジャイルアプローチは開発プロセスのスピードを向上させることができる。ネイビー・フェデラル・クレジット・ユニオンの人材開発担当バイスプレジデントであるマイク・コジアレクは、「社内に小規模なアジャイルチームがあり、即座に状況を立て直すことができる」と語る。「いまでは、何かを全社規模で展開する必要がある際に、それらのチームと連携し、対応力を高めている」
役割ではなく戦略的優先事項を軸にプログラムを設計する
人材開発の多くは、個人の役割や機能に応じたトレーニングに焦点を当てている。『トレーニングマガジン』の年次調査によれば、管理職向け、エグゼクティブ向け、コミュニケーション研修など「機能横断型」と見なされるカテゴリーに分類される研修は、全体の28%に留まっていた。
筆者が話を聞いたCLOの中には、特に企業が新たな方向へ迅速に転換する必要がある場面で、役割重視のアプローチを見直すことで大きなメリットを得ていると語る者もいた。