2025年以降の働き方を形づくる9つのトレンド
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サマリー:この数年で企業を取り巻く環境は大きく変化したが、2025年にはより大きな変化に直面することになる。ガートナーは、企業が対応すべき3つの主要な変化として「適応可能な働き手の必要性」「マネジャーの役割変化」「... もっと見る新たなリスクの出現」を指摘する。本稿では、企業の人事部門がこれらの変化によって直面するであろう働き方にまつわる9つの予測とともに、それにどう対処すべきかを解説する。 閉じる

企業が2025年に対処すべき3つの大きな変化

 過去5年間に企業を取り巻く環境が大きく変わったことは間違いないが、2025年にはそれに輪をかけて多くの激変が生じ、未来の仕事のあり方にも大きな影響が及ぶだろう。

 いま企業の幹部たちは、不安定なビジネス環境に直面している。人手不足がいっこうに解消されない一方で、テクノロジーの変化が急速に進んでおり、しかも働き手は激しい「改革疲れ」にさいなまれているのだ。おまけに、ステークホルダーは企業のリーダーに対して、コストを削減すると同時に、成長を加速させるよう要求している。

 ガートナーの調査によると、2025年に企業幹部は次の3つの大きな変化に対処しなくてはならない。

・新しい時代に対応できる働き手へのニーズの増大
・マネジャーに求められる役割の変化
・働き手に関わる新しいリスクの出現

 リーダーは、これらの要因が自社にどのような影響を及ぼすのか、そして自社が競争力を維持し、トップクラスの人材を獲得・保持し、望み通りのビジネス上の成果を上げるために、どのような行動を取るべきかを知る必要がある。ガートナーは企業の人事部門向けに、この3つの変化の大枠の下に9つの予測を示している。

新しい時代に対応できる働き手へのニーズの増大

1. 退職する人が大幅に増加し、しかもテクノロジーの激変が続く結果、社内の専門知識が不足し始める。

 世界の主要経済国では、2025年に引退年齢に到達する働き手の数が史上最も多くなる。それに伴い、企業は社内で最も経験豊富な働き手たちを続々と失うことになる。

 一方、新しいテクノロジーが登場したことにより、さまざまな業種の企業でエキスパートと初心者のあり方が様変わりしつつある。これまで研修生やサポートチームが担っていた機能の多くがAIによって代替され、若手の従業員は、学習したり、経験を積んだりする機会を失ってしまった。新人の成長を促す役割を果たしていた業務がAIによって実行されるようになり、企業のリーダーたちは、未来のエキスパートをどうやって育成すればよいのかと頭を抱え始めている。

 専門知識の枯渇をいっそう増幅させているのが、実地訓練の機会が不足している現状だ。この点には、シニアクラスの従業員と若手従業員の両方が懸念を抱いている。2024年5月にガートナーが3375人の働き手を対象に実施した調査によると、回答者の10人中6人は、職務を果たすうえで中核を成すスキルを育むための実地でのコーチングを受けられていないと答えている。