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部下が「上司の上司」とつながることに嫉妬していないか
銀行で上級管理職を務めるデイビッドは、コーチングセッションが始まると筆者にこう言った。「サビーナ、私はレイのことが心配だ」。レイはデイビッドの直属の部下で、デイビッドが彼の育成を優先するほどのスターパフォーマーであることは知っていた。では、何が心配だったのか。
デイビッドは、レイがスキップレベルの上司(上司の上司)、つまりデイビッドの上司であるリサと直接やり取りをしていることを懸念していた。デイビッドとリサには、レイに対する称賛や賞に関するメールがたえず届き、リサは重要な会議にレイを出席させることを頻繁に求めた。レイが大規模なイベントでスピーチをすると、誰よりも大きな拍手が送られた。デイビッドはレイの成功を支援しながらも、気になっていた。
リサが直接レイに電話をしてプロジェクトについて話し合い、デイビッドの意見を聞かずに次のステップに合意したこともあった。こうしたことがレイの優先的に行うべき重要な仕事の進行を遅らせただけでなく、デイビッドに不安感を与えた。リサとレイが直接やり取りをし続けるなら、自分の付加価値は何なのか。自分は必要とされているのか。筆者が、自分に正直になるようデイビッドにさらに迫ると、彼は嫉妬があることも認めた。デイビッドはリサと素晴らしい関係を築いていたのに、彼女がレイとミーティングをしていることで、彼女との時間が失われていたのだ。
ハイパフォーマーの育成に熱心な上司でさえ、彼らに出し抜かれることを懸念することがある。あるいは、レイのケースのように、部下が階層を飛び越えて上司の上司に直接報告することを恐れるかもしれない。また、部下があまりに目立つようになって他のチームに引き抜かれるのではないかと心配することもある。デイビッドはこうした懸念を抱いていた。上司は意図せずして、ハイパフォーマーの障害になることがある。部下に対して、必ず自分を通し、けっして上司の上司と直接仕事をしないように要求したり、彼らの会議に毎回自分も参加させるよう主張したり、すべての仕事について上司の上司に伝える前に自分と検討するよう要求したりする。
しかし、優秀な人材にあなたの上司と接する機会を与えることは、リテンションの重要な要素になる。そうした機会によって、あなたと部下の両方が部署の外のより高いレベルの領域を見ることができるため、広範なビジョンに関するアイデアや議論が促進される。あなたの上司と事前に意見をすり合わせておけば、全員が足並みを揃え、デイビッドがリサから受け取ったと感じたような、混乱を招くメッセージが伝わることはない。
自分の上司と部下の間のスキップレベルの関係を意図的かつ戦略的にすることで、あなたの不安が現実になるのを防ぐことができる。チームの中に、あなたが投資し、成長させ、引き留めたい有望な人材がいるものの、その人のキャリアパスについて不安を覚えているなら、デイビッドと筆者が考案した、懸念を克服し、ハイパフォーマーの成長を促す4つの戦略を紹介しよう。
不安を特定する
まず、あなたが感じている脅威を特定することから始めよう。デイビッドの場合は以下のような脅威を感じていた。
・レイが自分の地位を奪う
・リサがレイを他のチームに引き抜く
・レイが自分と同じ地位に就き、自分の付加価値が低下する
・リサが自分を通さずレイの仕事を指揮する
デイビッドが不安を洗い出した後、彼と筆者は、レイがリサと過ごす時間を増やすことのプラス面を挙げた。レイの注目度が高まるだけでなく、チームが取り組んでいるプロジェクトにも光が当たる。リサがレイの優れた仕事を見れば、そうしたプロジェクトを発展させるためにリソースを投入する可能性が高まり、チームの他のメンバーのキャリアアップにもつながるかもしれない。そして、デイビッドは優秀な人材を集め、育成していると認められるだろう。
この作業を通して、デイビッドはいくつかの懸念が根拠のないものであることがわかった。たとえ、そのうちのどれかが現実となったとしても、リサとレイの間の交流を閉ざすのではなく、開くことには大きなプラス面があった。