産業界がトランプ政権に求めるべき3つの政策
Jim Watson/Getty Images
サマリー:ドナルド・トランプがブルーカラー労働者の支持を背景に勝利し、再び大統領に就任した。新政権の財政政策には、労働者重視の成長戦略が求められている。企業が従業員を尊重し、適切な待遇を提供すれば、長期的な成長... もっと見ると投資リターンが期待できるためだ。筆者は「包摂的資本主義評議会」を設立し、経済改革を推進してきたが、持続的な変革には政府の積極的な支援も不可欠である。本稿では、産業界がトランプ政権に提案すべき3つの政策を紹介する。 閉じる

産業界がトランプ政権に提案すべき3つのアイデア

 ドナルド・トランプが大統領へ返り咲き、2期目のトランプ政権がスタートした。トランプがホワイトハウスに帰還できた一因は、ブルーカラー労働者の支持を獲得したことにあった。米国のブルーカラー労働者の多くは、民主党を見放したように見える。2024年11月の大統領選挙では、大学を卒業していない低所得層の有権者の半分以上がトランプに投票している。

 新政権の財政政策は富裕層を優遇するものになるだろうという予測が多いが、トランプは、どのような人たちのおかげで大統領に当選できたのかを忘れないほうがよいだろう。具体的には、ビジネス主導の経済成長を促進できる税制を採用し、それを通じてすべての米国民に恩恵が及ぶようにすべきだ。一方、企業のリーダーたちは、長い目で見た場合の自社の成長と、米国経済の成長を実現するために戦略的に行動し、成長重視・労働者重視の政策を支持すべきである。

 最も賃金が低い層の働き手の経済的地位を向上させることには、企業のビジネス面でも好ましい影響が期待できる。経済的な不平等の度合いが小さいことと、経済全般の成長率が高いこととの間には、相関関係が認められている。そして、経済成長率が高まれば、社会の構成員すべてに恩恵が及ぶ。その中には、企業の株主も含まれる。

 自社の従業員の扱い方に関して最も有効な行動を実践できている企業は、長期にわたり株主のために価値を生み出せる。この点は、世界規模の人材採用プラットフォームであるインディードとオックスフォード大学の「ウェルビーイング・リサーチ・センター」が最近行った調査でも明らかになっている通りだ。

 そのような傾向は、働き手を尊重する方針を採用している企業の株式に投資している投資信託のパフォーマンスによっても実証されている。たとえば、「ジャスト100」「ハーバー・ヒューマンキャピタル・ファクター」(HAPI)といったファンドは、それぞれ米国の代表的な株価指数であるラッセル1000およびS&P500より高いパフォーマンスを記録している。

 5年前、第1次トランプ政権の時代に、筆者は、機関投資家、民間企業のCEO、市民団体とともに、「包摂的資本主義評議会」という非営利団体を発足させた。市場主導で、より好ましい経済システムを築くことが目的である。

 この評議会ではこれまで一貫して、投資家と産業界が従業員と地域コミュニティと株主のウェルビーイングを高めるための行動を促す方法を見出そうとしてきた。包摂的資本主義は、ビジネス界の主導により既存のシステムを改革することを目指す重要なムーブメントといえる。

 しかし、民間セクターだけで変化を実現することは不可能だ。政府による強力なインセンティブも欠かせない。そこで、ビジネス界がトランプ政権に対して提案すべき政策上のアイデアが3つある。