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チーム内の意見の対立は避けられない
サム(仮名)は、みずからが率いているチームのメンバー2人がいつも言い争ってばかりいることに困惑し、どのように対処すべきか途方に暮れていた。2人のいさかいは、最初のうちは、ある重要なプロジェクトに取り組むうえでどのようなやり方が最善かという点をめぐる意見の対立だったが、それがやがて全面戦争に発展してしまった。
その2人が同じ会議に出席すると、常に緊迫した空気がその場に充満した。2人は互いに対して辛辣な言葉をぶつけたり、相手の発言をさえぎったりした。そのうちに、チーム内が2つの派閥に分かれ始めた。サムは、こうした状況をあくまでも2人の「性格の衝突」と位置づけ、自分にできるのは、2人を同じプロジェクトに関わらせないようにすることだけだと考えていた。
あなたがマネジャーだとすれば、メンバー全員の仲がよく、みんなの意見が一致していて、意見対立がないチームを率いたいと夢見ているかもしれない。しかし、そのような「対立と無縁のユートピア」は、少なくとも差し当たりは快適かもしれないが、それが最良の結果につながるとは限らない。
むしろ、生産的な意見対立がないチームは、『あなたのチームは、機能してますか?』の著者パトリック・レンシオーニが言うところの「つくり物の調和」に陥ってしまう。つまり、チーム内にいっさい問題がないかのように誰もが振る舞っているけれど、現実には、口に出されていないアイデアや、表明されていない異論、ことによると、水面下でくすぶり続ける怒りが存在しているのだ。
研究によると、同僚の意見に異論を唱えても問題がないとメンバーが感じるチームは、そうでないチームに比べて、高い成果を上げることができる。そのようなチームのほうが質の高い意思決定を行えるためだ。意見対立とともに生じる摩擦は、時に不愉快ではあるかもしれないが、創造性と成長への道を開くのである。
ただし、職場における意見対立には、健全な対立と不健全な対立があることも知っておくべきだ。本稿の冒頭でサムが経験していたチーム内の対立は、明らかに不健全な対立の性格が強い。
健全な対立は、チームを目標へ向けて前進させる。この場合は、チーム内に生産的な人間関係が形づくられて、メンバーが互いに敬意を抱き、信頼し合う関係が生まれる。それに対し、不健全な対立は、チームが前進する足を引っ張る。そのようなチームのメンバーは、みずからの意見を述べることに不安を感じ、異論に耳を貸さなかったり、意見の異なる同僚を非難したり、そうした同僚の発言や行動に敬意を払わなかったりする。
では、サムは──そして他のすべてのマネジャーは──どうすれば、チーム内にもっと健全な対立が生まれるように促せるのだろうか。
出発点は、チーム内で意見対立が生じるのは当然であり、避けられないと認めることだ。そして、そうした緊張関係を受け入れるだけに留まらず、緊張関係を表面に引っ張り出して積極的に向き合うべきだ。以下では、そうしたことを実践するために有効なアプローチをいくつか紹介する。
意見対立があっても問題ないとはっきり言う
チームのメンバーに対して、意見対立があるのは当たり前であり、生産的なことでもあると伝えるべきだ。異なる意見をぶつけ合うことは、コラボレーションやチームワーク、イノベーションの一部なのだと説明しよう。人間には、どうしても調和を乱すような発言や行動を避けようとする傾向がある。その点を前提にすれば、メンバーが同僚の意見に異を唱えることは想定の範囲内であり、そうした状況は問題ではなく、チャンスなのだと明確に伝える必要がある。