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「感謝のしすぎ」という落とし穴
感謝をする習慣には多くのメリットがあり、個人と組織の両方のパフォーマンスを大幅に向上させる可能性があることはよく知られている。研究によると、感謝は仕事へのエンゲージメント向上や生産性の上昇、さらには従業員の定着率改善にもつながる。感謝の習慣は、ポジティブな姿勢を育み、仕事への満足度を高めて、長期的な成功をもたらす手段にもなる。
だが、感謝にも落とし穴があるとしたらどうだろうか。
本稿の共著者は、意外なペアといえるだろう。チャプリンは、感謝とウェルビーイングの研究者で、チゾムは経営者であり、エグゼクティブのアドバイザーだ。そのような2人がリンクトインでつながり、お互いのコンテンツに協力している。そこでディスカッションを重ねる中で、これまでのキャリアを振り返ったところ、共通する後悔を抱えていることがわかった。それは職業人生を通じて、積極的に自己主張してこなかったことだ。
これは私たちが育った貧しい家庭環境に起因する。恵まれない家庭の出身だったために、最小限のチャンスや承認を与えられただけでも深く感謝するよう習慣づけられ、自分の価値やポテンシャルを主張することをしばしば犠牲にしてきた。このテーマを掘り下げる中で、こうしたいびつな感謝の習慣は、論理的思考や意思決定にも悪影響を与えるおそれがあることに、私たちは気がついた。
もしあなたが、ささやかな昇給に納得し、同じ職位への異動を受け入れ、あるいはすでに手いっぱいなのに追加プロジェクトを引き受けることに同意したことがあるなら(しかも感謝が足りないと思われることを恐れて、真の希望は口にせず、上司が認めてくれたことに感謝したことがあるなら)、あなたも無意識のうちに、感謝過多の落とし穴を経験している。
だが、これはさほど珍しい現象ではない。
感謝過多の3つの落とし穴
感謝の罠に陥ると、現状に満足し、きちんとした自己主張ができなくなり、プロフェッショナルとしての能力開発が妨げられるおそれがある。現状への感謝と、より上を目指す意欲のバランスが崩れると、自分の貢献が称賛はされるものの、出世の機会は逃してしまう可能性がある。あなたが感謝の習慣を構築するか、引き続き実践しようとしている場合、3つの落とし穴に注意して、それを回避する方法を学ぼう。
落とし穴1:現状に満足するか、不満でも妥協するようになる
たとえば、あなたが重要なプロジェクトに貢献する機会を得たとしよう。たしかにエキサイティングな機会だが、あなたの希望とは少し違っていた。本当はプロジェクトのリーダーになりたかったのだ。「でも、プロジェクトに参加させてもらっただけで感謝すべきだ。このような機会が、まったくない人たちと比べればずっといい」と、自分に言い聞かせるかもしれない。これは、自分ほど幸運ではない人と比べて、自分の立場を好意的に評価する「下と比べて感謝する」典型例だ。このような考え方が重要な時もあるが、それは自己改善や自己主張を妨げる場合もある。
この落とし穴を避ける方法
自己満足を避けて、チャンスを逃さないようにするためには、出世には自己宣伝が不可欠であることを理解しよう。また、より多くを求めることは、現状に感謝していないことにはならないことを認識する必要がある。むしろ、より多くを求めることは健全な野心であり、継続的な改善への意欲を示している。
このような場合は、上司と話し合いを持ち、自分の能力を強調して、今後のキャリアパスを語り合おう。現在進行中のプロジェクトを成功させるために、引き続き注力するつもりであることを明確にした上で、「私は……」と宣言(たとえば、「私はリーダーシップを執る準備ができていると思います」など)して、自分の希望を明確に伝えよう。