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生成AIのポテンシャルが活かされていない理由
新しい破壊的なテクノロジーは、興奮と不安の両方をもたらすことが多い。生成AIも例外ではない。とりわけマーケティングと営業の分野では、生成AIに熱い視線が集まっている。マッキンゼー・アンド・カンパニーが最近、約4000人のビジネスリーダーを対象に行った調査では、20%の営業組織で生成AIを活用した事例が1件以上あり、それ以外の組織でも積極的な実験がなされていることがわかった。その初期段階の結果は、有望性を示すものだった。回答者の3分の2が、生成AIには「非常に」または「著しく」メリットがあるとしているのだ。
それでも、その浸透には後れが見られる。これは大きな問題だ。生成AIを有効活用すれば、マーケティングの生産性は最大15%、営業の生産性は最大20%高まる可能性があるからだ。生成AIのポテンシャルが活かされないままでいる大きな理由は、マーケティング部門と営業部門のリーダーが、5つの根強い誤解に縛られているからだろう。
誤解1:生成AIは顧客発見の初期段階でしか役に立たない
生成AIは、「トップ・オブ・ファネル」(潜在顧客に商品やサービスを認知してもらうこと)、とりわけ潜在顧客の獲得と顧客情報の収集・分析で、価値の高い役割を果たすことがわかっている。ただ、そのポテンシャルはカスタマイズされたコンテンツづくりや研究サポート、競合分析、提案書の自動作成、そして成果の評価など、マーケティング活動の最終段階にまで及ぶ。
多くの場合、人間の判断と創造性は依然として不可欠だが、生成AIは退屈な単純作業の多くをこなすことができる。たとえば、ある法人向けソリューション企業は、生成AIを使って、ミーティング前に営業担当者にブリーフィング(顧客の詳細情報や、それまでのやり取りの概要、価値提案に関するインサイトなど)をしたところ、セグメント営業の生産性が10%上昇した。同じように、あるヘルスケア組織では、生成AIモデルを使って、提案依頼に対応した。このAIモデルは、社内情報と公開データベースを駆使して有望なテーマを見極めることができるため、応答時間は従来の半分以下の1~2日に短縮した。
誤解2:生成AIが大きな価値をもたらすためには大量の顧客または取引が必要だ
生成AIは、大量の消費者基盤がある場合に(たとえば銀行や小売業で)、従来のやり取りや取引を自動化することに優れた能力を発揮してきたが、大型取引や企業など法人間(B2B)でも同じくらい有効な働きが期待できる。
まず、生成AIはナレッジマネジメントと大規模データ処理を向上させる。営業担当者は、プロダクト研究や返信メールの作成時間を大幅に節約できる。第2に、生成AIは公開情報(プレスリリースや報道、社内ミーティングのメモなど)を自動的に取得することにより、雑多なデータからインサイトを抽出して、営業担当者と営業部門マネジャーが効果的に仕事をこなすパワーを与える。第3に、大型取引を抱えていたり、販売サイクルが長かったりする企業の場合、生成AIは管理業務や調査、会議サポート、ナレッジマネジメントに特に役に立つ。たとえば、ある通信会社は、生成AIを使って情報収集を行い、価値提案の質を高め、中小企業や大企業向けに顧客計画を作成することにより、手作業を90%減らし、営業チームが有望なチャンスを効果的に見つけられるようにした。
誤解3:生成AIはまだ複雑な顧客問題を解決できない
マーケティングや営業のプロの中には、生成AIは質問に答える対話型インターフェースにすぎないと考える人がいる。だが、先進的な企業はこの認識を超えて、社内タスクと顧客対応タスクの両面で自律的エージェント(「エージェンティックAI」と呼ばれる)を育成している。
たとえば、ある大手機器メーカーは、生成AIエージェントを使って部品交換のためのメールのやり取りを自動化した。このAIエージェントは、導入から1カ月で約5万人の顧客とやり取りし、100万件以上の見積もりを作成した。AIエージェントの役割は拡大する一方で、営業や顧客対応プラットフォームに組み込みやすくなっている。