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ビジネスにおけるスピードは「悪」なのか
ビジネスにおいてスピードには悪いイメージがつきまとうが、それも当然だ。ボーイングの品質問題やFTXトレーディングの破綻、短編動画配信サービス「クイビ」(Quibi)の劇的な失敗については、スピードが議論の的になることが多い。物事があまりにも急速に進んだため、リーダーシップや企業文化、ビジネスモデルに明らかな欠陥があることに誰も気づかなかったのだ。
この数週間で、スピードに対する評価がさらに悪化しているのではないかと筆者らは懸念している。米政府の一部の組織が目まぐるしいスピードで解体され、連邦政府の支出削減策の戦略的コストや付随的損害に対する明確な配慮はほぼ見られないからだ。
こうした活動の前提となっているのが、シリコンバレーの有名な「素早く動き、破壊せよ」という精神に集約されるように、進歩か人々への配慮か、どちらか一方しか選べないというものだ。未来をつくるためには、ある程度の破壊は避けられない。
筆者らはこの10年間、ビジネスリーダーたちがその混乱を収拾するのを支援してきたが、その経験から得られる重要な教訓の一つは、このトレードオフは誤りであるということだ。最も成功している著名なチェンジリーダーたちは、顧客、株主、従業員の成功とウェルビーイングに責任を持ちながら、問題を加速度的に克服している。彼らは、素早く動き、「解決」しているのだ。
フォード・モーターのアラン・ムラーリー、ペプシコのインドラ・ヌーイ、マイクロソフトのサティア・ナデラなど、過去20年間に企業を再生させた最も著名なリーダーたちについて考えてみよう。彼らは皆、危機感を持って停滞した組織を活性化させ、より機敏で迅速、かつ戦略的な組織へと生まれ変わらせた。効率性を最優先事項とし、その過程で人員やプログラムを手放したが、より競争力のある企業を築くという明確な目標に向かって、慎重にそれを行った。
公共部門でも民間部門でも、大きな問題に取り組むリーダーたちに助言したいのは、スピードを落とすことではなく、一度立ち止まり、全力疾走する前に極めて重要なステップを踏むことだ。筆者らはこれを「走る権利を得ること」と呼んでいる。その内容を以下で解説しよう。
1. 真の問題を解決する
チェンジリーダーたちが、問題の根本原因ではなく、兆候に対処しているために、貴重な時間を失うばかりで成果を上げられずにいる状況を、筆者らはあまりにも頻繁に目にしてきた。
あるアーリーステージのテック系スタートアップのリーダーシップチームは、年配社員と若手社員の「世代間の衝突」に象徴される企業文化に問題があると確信していた。だが実際は、戦略上の問題があった。会社が焦点を絞ろうとしないために、同じ考えを持つ従業員同士が結集していたのだ。チームが筆者らに連絡してきた時には、彼らはすでに数カ月間も間違った問題を解決しようとしていた。