
-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
職場での「ガスライティング」にどう対処するか
職場で敵対的な行動を経験する可能性は誰しもあるが、リーダーシップチームのメンバー間で敵対的行動が起こると、深刻な結果を招くことがある。こうした行動は、最初はある経営幹部の行動を抑圧したり妨害したりするものとして現れるかもしれない。しかし、それが深刻なレベルにまでエスカレートすると、ターゲットにされた幹部に個人的にも仕事上でも深刻な結果をもたらしかねない。
敵対的行動は、さまざまな形で現れる。筆者らは、S&P500企業の引退した経営幹部や引退を控えている経営幹部にインタビューを行い、敵対的行動としてよくある3つのタイプを特定した。
1)ある元幹部は、事業部門にマイナスの影響を与える取り組みを行っていたことで、部門トップから屈辱的な態度で公然と威嚇されたと話した。2)別の幹部は、ボイコットに遭った。無視され、重要な意思決定が行われる会議に呼ばれなくなった。自分たちの貢献が積極的に妨害され、否定され、さらには発言の機会も奪われた。3)さらに別の幹部は妨害行為を受けた。従業員の誰かが倫理ホットラインに通報し、ベンダーに現金を渡したと誤って告発したのだ。調査が進むにつれ、誰かが自分たちをプロジェクトから遠ざけ、意思決定権を持つ幹部の自分たちに対する信用を失墜させようとしていたことがわかった。
これらのシナリオは、いずれも敵対的行動の一面にすぎない。実際、敵対的行動に直面した時は、さらに悪いことが影で起きている可能性がある。「企業内ガスライティング」だ。企業内ガスライティングとは、敵対的行動を覆い隠し、同僚や影響力のあるステークホルダーの間に疑念を植えつけ、経営幹部の信用を損なうために用いられる手法である。
個人が他者にその人の認識を疑わせようとする従来のガスライティングとは異なり、企業内ガスライティングは、組織全体やチームに経営幹部のパフォーマンスや役割について疑念を持たせる否定的なストーリーをつくり出す。これは、その人の仕事上の評判だけでなく、経営幹部としての自信をも失墜させる。加害者は、被害者に対してネガティブな話を広め、敵対的行動を示すだけでなく、被害者の立場を否定し、覆そうとする別のテクニックを使う。対立を避け、自分の行為の重大性を歪曲したり、矮小化したりすることもある。最終的には、スケープゴートに仕立て上げ、自己保身のために政治的影響力を行使して、被害者と加害者の力関係を逆転させる。
企業内ガスライティングは段階的に行われるため、被害者がそれに気づかないことがある。影響は感じても、何が起きているのか、事態の深刻さを完全に理解していないこともある。
しかし、このような社会秩序を乱す行動に対して、経営幹部が何も手を打たなければ、それを後悔するかもしれない。ターゲットにされた経営幹部が実践し、成功した3つの行動を紹介する。
正しい問題に焦点を当てる
企業内ガスライティングが段階的に進行すると、被害者は敵対的行動から身を守ることに没頭し、ネガティブなストーリーが根づき始めていると気づかないケースがよくある。
S&P500のグローバルテクノロジー企業のCIOは、こう述べた。
「私は敵対的行動にとらわれ、ネガティブなストーリーによっていかに自分がおとしめられているかを見逃していた。それを感じていたが、把握することができなかった。もしいまのような明晰さを持っていれば、敵対的行動ではなく、そのストーリーに対抗することに注力していただろう」