常に「成長」を目指さなければならない

 何か望みが一つ叶うというならば、経営者の大半は成長性の高い新規事業を確実に成功させる方法を知りたいと願うのではなかろうか。経営の実務に携わる人々がこのテーマに寄せる関心には並々ならぬものがある。

 研究者である我々も、これら経営者たちと同じ願いを抱いていた。そこで、V字回復に成功した企業を複数の業界にわたって調査した。既存事業の延長線上にある低リスクの改革から、破壊的で高リスクのものまで、成長戦略にはさまざまなアプローチがあった。

 3年間に及ぶ調査によって、我々はその中間に位置づけられるあるアプローチに注目した。すなわち、それは「プロフィット・ドライバー」(利益を拡大させるカギとなる要因)の再定義である。とはいえ、実務レベルでは何の変哲もない変更にすぎない。

 たとえば、ある企業は顧客ニーズとの乖離を埋めるために、代金を請求する際のUOB(unit of business:事業評価単位)を変更した。競合他社とは異なる経営指標を重視することで事業の選択と集中を図り事業構造を改善した企業、また顧客企業がその事業単位とKPI(key performance indicator:重要経営指標)を変更するのを手伝った企業もあった。

 その視点から新たな成長をとらえると、手の施しようもなくコモディティ化が進んでいる、あるいは戦略的な魅力に乏しいという理由から見向きもされなかった業界にも、成功事例が転がっていることが判明した。プロフィット・ドライバーを再定義したところ、業界全体が一変したというケースもあった。

 生コンクリートや再保険ほどの成熟産業もないだろう。いずれも100年以上の歴史があり、代わり映えのしない商品と競争ルールで、マンネリ化した競争を繰り広げている。ところが両業界にも、プロフィット・ドライバーの再定義や、UOBとKPIの変更が奏功して、飛躍的な長期的成長を遂げた企業が存在する。

 生コンクリート業界の例から説明しよう。生コンクリートには、品質の劣化が激しいという弱点がある。つまり、ミキサー車に注入し始めた瞬間から凝固し始めるのだ。したがって、迅速に輸送して納入しなければならない。

 メキシコのように都市開発が急速に進んでいる市街地は、交通渋滞や天候、不安定な建設労働者の供給などの理由から、正確な配送計画は至難の業だ。建設業者は、建設現場の受け入れ準備が整う前に生コンクリートが届いてしまう、あるいはもっと悪いことに、生コンクリートが届かずに高賃金の作業員たちを遊ばせておくといった事態を覚悟しなければならない。