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トップ・ラインにシックス・シグマを適用する
コスト管理の実効性や製造プロセスの効率性をいかに高めるか。多くの企業で十分すぎるほどに追求されてきている。その際、TQM(総合的品質管理)やシックス・シグマ[注]といった活動がつき物である。
しかし、シックス・シグマの考え方や手法は、このようにコスト削減には頻繁に用いられるが、売上げを増やすために活用されることはめったにない。その結果、多くの企業が、売上げの段階で失わなくてもよいキャッシュを失っているのだ。
本稿では、世界的な産業機器メーカーであるA社が、ある製品ラインのプライシング・プロセスに、シックス・シグマをどのように適用したかについて紹介する。
このシックス・シグマ・プロジェクトの成果として、まず年間50万ドルの増収という目標を3カ月足らずで達成した。また、全製品ラインの標準価格を引き上げた際、この製品ラインは値上げした分がそのまま売上げに反映されたが、それ以外の製品ラインは思うようにいかなかった。さらに、わずか半年で、この製品ラインだけで580万ドルの増収という目を見張るような業績を実現した。しかも、増収分はそのまま増益につながっている。
このように、売上げの取りこぼしに歯止めをかけただけではない。この取り組みを機に、プライシング・プロセスにおいて、だれに、何を決定する権限が与えられているのかがはっきりし、それまで悩みの種だった社内の摩擦の大半が解消された。
価格政策が不透明であること、あるいはそのように見えることは、営業担当者が顧客と交渉するうえでは好都合かもしれないが、社員同士が対立したり、混乱したりすることに何らメリットはない。しかしA社では、あからさまな対立が見られた。
営業担当者たちは、自分たちの使命は、経営陣が掲げた目標のとおり、市場シェアを伸ばすことであると信じており、顧客のそばにいる自分たちこそ、最適価格を知る者であると自負していた。したがって、プライシング担当マネジャーやプライシング・アナリストたちを現実に疎く、変化に遅すぎる、言わば余計な邪魔者と見なしていた。義務づけられている請求価格の確認や内部統制の手順を飛ばすことは日常茶飯事で、そこに売上げを蝕む可能性があった。
その一方、プライシング・アナリストたちは、価格分析が必要不可欠であり、承認プロセスを迅速化した結果、会社の収益性が守られているという自負があった。