カスタマー・フォーカスを志向した17社の物語

 コモディティ化の圧力は強まる一方で、これに対抗する手段として、カスタマー・フォーカスの強化に力を入れるCEOがますます増えている。

 しかし、数々の企業が挫折していることからも明らかなように、単なるCRMシステムのアップグレードや、より効果的な顧客満足度の測定法や改善法の導入だけでは顧客との距離を縮めることはできない。

 たしかにツールや技術も重要だが、むろんそれだけでは十分でない。顧客との距離を縮めるという課題は、単にIT部門やマーケティング部門の問題ではなく、全社を挙げて歩むべき旅路である。

 優れたカスタマー・フォーカスを誇る企業はいずれも、同じ岐路に遭遇し、ほとんどが同一の問題に苦しむなど、その道程は驚くほど似通っている。そして、この道程は何年もかかる険しいものだ。しかし、一歩前進するたびにその努力は報われ、最後まで歩き抜いた企業は大きな利益を手にすることができる。

 コンチネンタル航空がこの課題に取り組み始めたのは、経営破綻から立ち直るために、顧客一人ひとりの収益性を詳細に把握する必要に直面した時のことだった。まず、サービスの混乱によって年間何百万ドルもの損失が発生しているという事実が発覚した。

 コンチネンタル航空は、出発の大幅な遅れやオーバーブッキングによる搭乗直前のキャンセルなど、何らかのトラブルが発生した際に、どのように顧客に対応しているのか、全社的に調査した。

 その結果わかったことは、このような問題を詫びるための補償は、搭乗ゲートの係員の恣意的な裁量で提供されており、しかもどういうわけか、たいてい最も価値の低い顧客が最も高額の補償を受けていたことだった。

 さらに悪いことに、一部の乗客は二重に補償を受ける方法を見つけていた。搭乗直前に予約を取り消された人のなかには、まず搭乗ゲートの係員にアプローチして無料フライト・クーポンを受け取り、その直後に本社に電話して、再度クーポン券を要求する人がいた。電話を受けた担当者に、相手がすでにクーポン券を受け取っていることを知る術はなかった。