顧客接点から競争優位を生み出す

 顧客にサービスを提供する方法には、どのようなものがあるだろうか。ちょっと列挙してみたい。店舗、ウェブサイト、あるいはカタログ、顧客サービス用コール・センター等々──。

 顧客接点となるコンタクト・ポイントには、店員やコンシェルジェといった人間によるものと、自動販売機や音声応答装置といった機械によるものの2つがある。ほとんどの企業は、このようにさまざまなインターフェースを抱えているうえに、さらに拡張しようとして投資している。

 ところが、インターフェースをシステムとして構築できている企業は少ない。つまり、顧客とのインタラクションの接点となる各種手段が一つに統合されておらず、顧客とのリレーションシップ・マネジメントに役立つようなかたちで、独自の能力を発揮するには至っていないのだ。

 このようなインターフェースのポートフォリオは、明らかに競争優位につながるように管理しない限り、一番のお荷物になってしまう。つまり、過剰な人材と過剰な機械をきちんと調整しないまま働かせると(相反する目的を与えられる場合も多い)、いたずらに複雑化するだけでなく、コストが上昇し、顧客の不満も増える。

 しかし、このお荷物を、競争力をもたらす資産に変えることができる。それどころか、あらゆる産業において、事実上、このように転換できるか否かが勝者と敗者を分けるカギになる。したがって、効果や効率をこれまでにない水準へと引き上げるには、顧客接点のリエンジニアリングに真剣に取り組まなければならない。

 フロント・オフィス(顧客と接する部門)に、リエンジニアリングという概念を持ち出すのは意外に思われるかもしれない。1990年代、産業界を席巻して以来、この手法は主に事務業務に適用されるのが通例だった。

 しかし、既存の能力を踏まえつつ、白紙の状態からビジネスプロセスを再構築するというリエンジニアリングの原理は、現在のフロント・オフィスにまさに打ってつけといえる。顧客満足度の低下にしろ、平均的な店員の仕事ぶりにしろ、顧客とのインターフェースを刷新しなければならないことを示す兆候は枚挙に暇がない。同時に、いわゆるインターフェース技術の急速な進歩により、顧客接点におけるインタラクションをはじめ、サービス部門全体を改革することは十分可能になりつつある。

 フロント・オフィスのリエンジニアリングの難しさは、おそらくバック・オフィス(事務管理部門)のリエンジニアリングの場合と大差なかろう。むしろ、よりやっかいな面もあるはずだ。しかし、選択肢はほかにない。インターフェース・システムは、つまるところ、顧客と市場に向ける「会社の顔」である。最高の顔を見せずにはおられまい。