
-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
働く意義を探しているなら
29歳の時、ニック・ロマントは多忙な日々を送っていた。彼は、金融サービス会社バンガードで投資アナリストのマネジャーとして昇進を重ねていた。家庭では、妻との新婚生活に慣れ始め、子どもを持つことも考え始めていた。「私は、望みうるすべての才能に恵まれた金融の専門家だった」と彼は語った。しかし、ロマントはみずから多くのものを築いていたにもかかわらず、何かが欠けているという感覚を拭い去ることができなかった。
その消えない違和感は、より深い問いを彼にもたらした。自分は地域社会にどのような貢献をしているのか。より大きな影響を与えるにはどうすればよいのか。ちょうどその頃、消防士の友人から「地域の消防署でボランティアをしてみないか」と声をかけられた。その提案は彼の心に残った。
それから8年が経ったいま、ロマントは週に3〜10時間をラドウィッグス・コーナー消防団で過ごし、訓練を行い、緊急出動に対応している。認定を取得するために、彼は196時間に及ぶ実地訓練を修了した。消防士としてボランティア活動を行うことは、地域社会に貢献する手段となり、彼の2人の幼い子どもたちにとってもよい模範となっている。ロマントは現在、バンガードにおいて富裕層向けアドバイス部門の責任者として働いているが、消防士として地域貢献する側面が、日常の仕事以上に彼の心を満たしているという。「それは私に、さらに深い使命感を与えてくれる」と彼は語った。
火災への対応に伴う肉体的、精神的、そして感情的な負担は、すべての人に向いているわけではないが、ロマントのように、多くの若い専門職の人々が、みずからのキャリアを超えて充足感を求め、ボランティア活動に取り組んでいる。米国だけでも、25歳から44歳の約3分の1が、慈善団体、学校、宗教団体といった正式な組織を通じてボランティアを行っている。近隣住民の手助けや友人の支援、地域社会での無償奉仕といった非公式なボランティアに参加している人はさらに多い。
筆者が教鞭を執るノースウェスタン大学ケロッグスクール・オブ・マネジメントのMBAの学生たちは、ボランティア活動が「恩返しをしたい」という気持ちを満たしてくれると語っている。なかには、個人的な使命感を見出す手段としてそれを求める者もいる。特にキャリアの初期段階では、仕事が「言われたことをこなす」ものであり、「変化をもたらす」ものとは感じにくい。そのギャップを埋める手段として、ボランティアは人々の生活に意味と前向きな気持ちをもたらすことができる。それに加えて、身体的・精神的健康の向上という副次的な効果もある。
もし、あなたも日々の仕事を超えて社会に影響を与えたいと感じているならば、筆者がMBAの学生やより大きな目的を求める若手専門職に伝えている、ボランティアの力を活用するための3つのシンプルな方法を紹介したい。
1. 始める前に諦めないこと
世界に存在する問題の大きさに圧倒され、無力感を覚えるのはよくあることだ。「恩返しをしたい」という思いがあっても、自分一人の力で本当に変化を起こせるのかと疑問に思うかもしれない。筆者はこのような感情を、自身の学生たちやキャリア後期の人々の中にも見てきた。
もしこの感覚に共感するならば、落胆せずにいてほしい。あらゆる意味のある変化は、個人の中から始まるものだということを思い出すべきだ。たった一人の人間が、すべての問題を解決したり、あらゆる運動を主導したり、すべての命を救ったりすることはできないかもしれない。しかし、多くの人が行動を起こせば、それはやがて臨界点に達し、大きな成果を生み出すことができる。
「影響の輪」と「関心の輪」という概念は、こうした状況を考えるうえで有効である。この考え方は、教授であり文筆家でもあるスティーブン・コヴィーによって広められ、人々が最も効果的な領域に努力を集中できるよう手助けすることを目的としている。この理論によれば、貧困、気候変動、ジェンダー差別、その他の不平等といった大規模な問題に多くの人が深い関心を寄せているが、これらの多くは自分の直接的なコントロールの外にある。つまり、それらは「関心の輪」の中に存在している。
一方で、「影響の輪」にあるのは、自分の行動や選択、関与を通じて直接的に影響を与えることができる領域である。ボランティア活動の文脈で言えば、多くの人がこうした領域、たとえば地域社会や小規模な取り組みに注力することで、集団として前向きな変化を生み出すことができる。
その一例として、筆者のMBA卒業生である元エグゼクティブのパトリック・リーのケースが挙げられる。彼は自分の「影響の輪」の中で変化をもたらす方法を見出した。医療に情熱を持つリーは、「健康は人権である」と常に信じていた。また、世界中に存在する健康格差の規模が、個人一人で取り組める範囲を超えていることも理解していた。そこで彼は、小さなことから始めることにした。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の医学部に在学中、リーはパートナーズ・イン・ヘルスの共同創設者であるジム・ヨン・キムと出会った。同団体は、ハイチ、アフリカ諸国、その他の低所得地域において、健康、人権、社会的平等を提唱している。この出会いを通じて、リーは無償での支援活動に参加するようになった。彼はボストンの病院でホスピタリストとして勤務する一方で、ルワンダの農村地域においてパートナーズ・イン・ヘルスの活動に携わる日々を、3年間交互に送った。
こうして始まった小規模かつ焦点を絞った取り組みは、やがて彼をより大規模な変化を推進するリーダーシップの立場へと導いた。最終的に、このボランティア活動は、彼がキャリアの方向性を決めるうえで大きな影響を与えた。現在、リーはテキサス州オースティンにあるセントラル・ヘルスの社長兼CEOとして、貧困率が約10%に上る地域における医療アクセスの改善に取り組んでいる。
2. 小さく、いますぐ始めること
自分にも影響を与える力があると理解したら、次に問題となるのは「どこから始めるべきか」という点である。筆者が対話する多くの若者たちも、このジレンマに直面している。彼らは意味のある形でボランティアに参加したいと考えているが、どこで、いつ始めればよいのかがわからないのである。
多くの人は、より多くの資金、実績、影響力を手に入れた後に、最大の貢献ができると信じている。しかし、それは事実ではない。もし「適切な時期」が来るのを待ち続ければ、その時は永遠に来ないかもしれない。
だからこそ、筆者は次のように助言したい——いますぐ、この場所で始めること。自身のネットワーク、地域社会、あるいはごく身近な近隣にさえ、前向きな変化を生み出そうと活動している人々、プロジェクト、団体が存在している可能性が高い。それは、困窮者への支援、ある運動の擁護、あるいは地域の強化といった取り組みかもしれない。
意義ある方法で関わりたいと考えるのであれば、自分にとって何が重要であるかを明確にする必要がある。少し時間を取って内省し、自身の価値観と一致する運動や、自分が解決したいと感じている問題を明らかにするとよい。そこから、自分が意味ある形で貢献できる方法を探ることができる。重視するポイントを絞るために、以下のような問いを指針として活用するとよい。
自分が関心を持つ地域の問題や運動は何か、そしてその理由は何か
社会的課題によってあなた自身が直接影響を受けた経験があり、それを支援したいと感じているのかもしれない。あるいは、子ども、高齢者、支援が届きにくいコミュニティなど、特定の人々に特別な関心を抱いている可能性もある。自己分析を行うことで、関心や情熱の「なぜ」に深く迫ることができる。
自分の関心、支援したい運動、またはコミュニティと一致する地域の団体はどこか、そしてそれらのボランティアニーズを知るにはどうすればよいか
地域の非営利団体のウェブサイト、SNS、掲示板などを調べるとよい。興味を持った団体の説明会に参加するか、直接問い合わせてボランティアのニーズについて尋ねてみるとよいだろう。そこでは、実務的な支援からアドボカシー(提言活動)、資金調達など、多様なボランティアの形態を知ることができる。また、自分が持つ独自のスキルを団体に共有するのも有効である。問題解決力、コミュニケーション能力、リーダーシップ、技術的な専門知識など、これまでの個人や職業での経験を通じて培った能力は、特に人手不足の団体において、重要な役割を果たす可能性がある。
友人や同僚は、どのようなボランティア活動に参加しているか
適切な機会を見つけるのに苦労しているが、それでも関わりたいという意欲がある場合は、自身のネットワークを活用することを検討してほしい。友人や同僚が参加しているボランティア活動に加わることで、現場での経験を得ることができ、自分にとって適した活動かどうかを探る手掛かりとなる。
3. インスピレーションの余地を残しておくこと
リーのように、筆者が関わってきた多くの人々と同様に、時間が経つにつれてボランティア経験が自身のキャリア選択に影響を与えるようになるかもしれない。ボランティアは、職業とは異なる新たな関心や情熱を自由に探求できる機会を提供する。これにより、自分を本当に満たすものを発見する、あるいは再発見する手助けとなる。価値観が変化するにつれ、職業として追求するに値する運動や目的を見出すこともあるだろう。そしてそれが、自身の使命と一致したキャリアへとつながる可能性もある。
最後の例として、サハル・ジャマルの物語を紹介したい。筆者の生徒になる以前に、ジャマルはジョンソン・エンド・ジョンソンでシニアマネジャーを務めており、同時に企業のCSR(企業の社会的責任)活動にもボランティアとして参加していた。そのCSR活動を通じて、彼女は特に女性と子どもに影響を与える世界的な健康問題に関心を持つようになった。この経験は、彼女のキャリア全体の方向性を大きく変えることになった。
ジャマルはその職を離れ、ケロッグスクール・オブ・マネジメントでMBAを取得するために進学した。彼女は東アフリカのジャカランダ・ヘルスでインターンを経験し、多くの女性が、家族を支えるために働きながら、授乳に困難を感じている現実を知った。これが彼女にインスピレーションを与え、ケニアで「マジマ」(スワヒリ語で「ミルク」の意)というソーシャル・エンタープライズを立ち上げるきっかけとなった。この企業は、女性にとって目立たず、持ち運び可能で、低価格の搾乳器を提供している。彼女は筆者に「私は、女性たちの生活に直接的な変化をもたらしたいと思った」と語ってくれた。
ボランティア活動がどのような形であれ、どこで行うものであれ、それはより深い使命感をもたらし、意味ある影響を生むことができる。自身の価値観や共鳴する運動について深く考えることにより、やりがいがあり、かつ楽しいと感じられる機会を見つけることができるだろう。最終的に、ボランティア活動は、自分自身の人生を豊かにするだけでなく、その経験を超えて広がる前向きな波及効果を生み出すのである。
"Looking for a Sense of Purpose? Volunteer," HBR.org, March 11, 2025.