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米中貿易戦争の背後にあるもの
米国のトランプ政権が中国との貿易戦争を急速にエスカレートさせていることを受けて、多くの企業は、世界の二大経済大国が喧嘩別れする可能性を直視し、自社が中国製品や中国市場に依存している状況について再考せざるをえなくなっている。それでも、トランプ政権は関税政策について中国とのディール(取引)をまとめようとしていると示唆しており、企業のリーダーたちは、おおよそ元通りの状態が戻ってくることを期待しているのかもしれない。
しかし、貿易戦争にばかり注意を払うことが間違いだとしたらどうだろうか。米中の経済的な権力闘争の本丸が別のところにあるとしたらどうだろう。
現在の状況を理解し、次に何が起きるのかを知るために、筆者は『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)の寄稿者で、アリゾナ州立大学サンダーバード国際経営大学院の教授(グローバルマネジメント論)であるアレン J. モリソンに話を聞いた。モリソンは、共著Enterprise China(未訳)や、2021年にHBRに寄稿した共著論文「米中デカップリングは事業戦略にいかなる影響を及ぼすのか」などの著者である(注:文章の明晰性と簡潔性を保つため、一部インタビュー内容に編集を加えている)。
──最近、米中の貿易戦争により、両国の経済が「デカップリング」するという予測をよく耳にします。この「デカップリング」という言葉は、実際のところ何を意味するのでしょうか。また、いま起きていることをそのように捉えるのは正しいことなのでしょうか。
アレン J. モリソン(以下略):多くの場合、「デカップリング」という言葉は、ある国が他のある国と自国を切り離し、その国との結びつきを弱めて、自国の独立性を強めること、という意味で用いられます。しかし、 INSEAD教授のスチュワート・ブラックとの共著Enterprise Chinaでも指摘したように、中国はそうしたことを目指しているわけではありません。この点は、最近の貿易戦争の前から変わっていません。中国が目指しているのは、他の国および外国企業への依存を減らし、究極的には、他の国および外国企業が中国に依存する時代を到来させることなのです。
──中国の指導部は、具体的にはどのようなことを目指しているのでしょうか。あなたは米中関係に関する2021年のHBRの共著論文で、中国が3つの目的を追求していると指摘していました。1)重要なテクノロジーおよび製品に関して、他の国および外国企業への依存から脱却すること、2)中国の国内市場において国内企業の優位を確立すること、3)国内市場での支配力を活かしてグローバルな競争力を高めることです。
テクノロジーは、こうした計画の核を成す要素であり、中国政府が掲げる「中国製造2025」戦略の焦点でもあります。この戦略は、10のハイテク産業を短期間に成長させることを目指すものです。現在、その目標年である2025年になりました。中国政府の計画は、どれくらい成功しているのですか。