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CMOの役割は著しく拡大している
近年、CMO(最高マーケティング責任者)の役割は、職務範囲と専門性の両面で著しく拡大している。デジタル機能の進展により、マーケティングリーダーが成長を実現する手法は大きく変化し、日々の実務負担が増すと同時に、利用可能なデータの増加により戦略の最適化に対する期待も高まっている。AIを含むデータおよびデジタル技術は現在、ユニークな製品・サービス、ブランド認知度の向上、優れた顧客体験、マスカスタマイゼーション、大規模なマイクロターゲティングを通じて顧客の維持と獲得を促進し、売上げを向上させるために一般的に活用されている。
CMOという肩書きはいまなお広く知られ、尊敬されており、既存顧客および新規顧客によってビジネスを成長させるというその役割の目的は変わっていない。しかし、責任範囲の拡大やマーケティング機能に対する共通認識の欠如により、その肩書きが時代遅れではないかという疑問も提起されている。実際、一部の企業ではすでにCMOの職務を、最高デジタル責任者(Chief Digital Officer)、最高顧客責任者(Chief Customer Experience Officer)、最高ブランド責任者(Chief Brand Officer)、最高製品責任者(Chief Product Officer)、最高収益責任者(Chief Revenue Officer)といった、より専門的な役割に分割している。
CMOの肩書きの「リセット」する、言わば再ブランディングすることは、マーケティングリーダーとその企業への影響力を高める助けとなるのだろうか。その役職名の変更と分割には賛否両論があり、単一の解決策は存在しない。企業は、マーケティングリーダーの肩書きを検討する際には、一定の原則を考慮すべきである。
CMOの役割は進化してきたが、マーケティング機能の範囲は依然として不明確である
カンファレンス・ボードが実施した、多業種のCMOやCEO、エグゼクティブリクルーターへのインタビュー、CMO向けのアンケートおよびラウンドテーブル、第三者資料のレビューを含む筆者らの多角的な調査に基づき、CMOの肩書きを見直すべき理由がいくつか挙げられる。
CMOの役割は長年にわたり大きく進化してきた。今日、CEOがCMOに期待する最優先事項は、トップラインの拡大にますます集中している。筆者らの調査によれば、需要創出、顧客獲得、成長に関する活動が、顧客体験、人材育成、ブランド構築よりも優先されている。AI、プラットフォーム、データを含むデジタル技術は、こうしたマーケティング上の優先課題を支援しているが、戦略、テクノロジー、財務、分析といった専門分野における高度な知見を必要とする。
新たな肩書き、あるいは複数の専門的な肩書きは、最新の戦略的優先事項やアプローチを示す手段となり、マーケティング自体の価値がうまく伝わっていないというマーケティングの「マーケティング問題」への対応にもつながる。マーケティングは社内で十分に理解されておらず、ブラックボックスのように見られることがあり、それが経営幹部や他部門、さらには外部パートナーとの協働や、マーケティングリーダーの戦略的影響力、最終的なビジネスへの貢献力を妨げている可能性がある。このような状況が、フォーチュン500におけるCMOの平均在職期間が2023年に4.2年と、他の経営幹部の平均4.6年より短い理由の一つかもしれない。
また、「マーケティング」という言葉自体に、従来型の印象を抱いている人もいる。筆者らの調査において、あるマーケティングリーダーは「マーケティングという名前は、やや時代遅れだ」と述べていた。
伝統的なCMOの肩書きは依然として主流だが、新たな経営幹部レベルの役職も登場した
たしかに、CMOの肩書きは依然として広く普及しており、2020年から2023年にかけて54%増加している。しかし同期間中、顧客関連およびマーケティング関連の専門的な肩書きが、CEOへの直接的な報告関係の有無にかかわらず、CMOの肩書きを補完あるいは代替する形でさらに大きく増加している。
これは、マーケティングリーダーの肩書きが変化の途上にあることを示唆している。たとえば、最高製品責任者(Chief Product Officer)の肩書きは80%増加した。同様に、オペレーションや財務成果に関連する肩書きも急増しており、最高商務責任者(Chief Commercial Officer)は78%、最高販売責任者(Chief Sales Officer)は75%、そして最高収益責任者(Chief Revenue Officer)は73%増加している。あるエグゼクティブリクルーターによれば、最高収益責任者という肩書きは、テクノロジー志向の創業者やCEOを商業面で補完する役割として、シリコンバレーで生まれたものである。