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ストレッチアサインメントの裏にある不平等
ケイラは、競争の激しい学部課程で工学の学位を取得した直後、大手テクノロジー企業にソフトウェアエンジニアとして採用された。しかし、入社して2年経っても、相変わらずバグの修正のような退屈な業務に携わっていた。彼女の言葉を借りれば、それは「他の人がより効率的に仕事できるようにするための仕事」であった。
上司に新しい仕事の可能性について聞いたところ、予想外の答えが返ってきた。彼は、「実のところ、君がいまどのような仕事をしているのかはよくわからない」と認めた。「昨年、君は素晴らしい成果を上げてくれたので、いまも同じように素晴らしい仕事をしていると私たちは思い込んでいるんだ。だから、あえて干渉しないようにしている」
上司が称賛として意図した「干渉しない形の信頼」は、ケイラにとっては逆効果となった。ケイラのチームでは、男性が女性の4倍を占めていたが、男性の同僚たちは定期的にストレッチアサインメントを与えられ、それによって専門的なスキルを習得し、管理経験を積み、社内での認知度を高めていた。同じ資格を持っていたにもかかわらず、ケイラは静かにそのような機会を見送られていた。
企業にとって、こうした事例は警鐘であるべきだ。ストレッチアサインメントは、人材を育成し、キャリアを前進させるための強力な手段としてしばしば取り上げられるが、現実には、その恩恵が平等に与えられるとは限らない。
ケイラの例は、筆者らのラボが実施した企業向けの大規模なケーススタディから得られたものであり、彼女の経験はけっして珍しいものではない。社員がキャリアを築き、社内で昇進していく過程において、ストレッチアサインメントは重要な役割を果たすことがある。これらの業務は、リーダーシップへの認知、スキル開発、キャリアの前進といった要素と密接に関わっており、いずれも人材開発・維持戦略における中核的要素である。
だからこそ、企業はストレッチアサインメントを偶発的な機会としてではなく、人材マネジメントの戦略的構成要素として取り扱う必要がある。そのためには、これらの任務に対する公平な支援、評価、報酬の制度を整備しなければならない。ケイラの例は、組織が非公式で一貫性のない方法に依存するとどうなるかを示している。人材を育てようとする善意の取り組みであっても、不均等かつ不公正な結果を招くことがあるのだ。
研究から明らかになったこと
筆者らは、10年近くにわたり、ストレッチアサインメントが若手社員のキャリア形成にどのような影響を与えるかを研究してきた。これまでの研究がミドルキャリアからシニアキャリアにおける重要性に焦点を当ててきたのに対し、筆者らは、ストレッチアサインメントの重要性がいつから現れ始め、誰が最も恩恵を受けているのかに注目した。こうした問いに答えるため、入社後数年以内のエンジニアを対象とした2つの研究プロジェクトを設計した。