ロゴの色が与えるプラスとマイナスの影響を理解せよ
Illustration by HBR Staff
サマリー:色はロゴデザインにおいて単なる装飾ではなく、顧客の感情やブランド認知に大きな影響を与える戦略的要素である。一般的な色彩ガイドはポジティブな連想に偏りがちだが、実際には背景色やデザイン文脈によって印象は... もっと見る大きく変わる。特に抽象的なロゴは色の影響を受けやすく、具象的なロゴやフレーム付きのロゴは影響が軽減されることがわかった。本稿では、色の認知に影響する要因と、ブランドがそれをどう戦略的に活用すべきかを調査結果とともに示す。 閉じる

ロゴデザインにおける色の力と落とし穴

 色は、ブランディング、マーケティング、コミュニケーションにおいて大きな役割を果たしている。その力が最初に発揮されやすいのがロゴだ。ロゴに使われる色は、単なるデザイン上のディテールではない。ブランドに対する顧客の感じ方、反応、さらには記憶にまで影響を及ぼす戦略的ツールである。適切な配色によって、ブランドのアイデンティティを強化し、その価値観を示し、即座に感情的なつながりをつくり出すことができる。たとえば、赤は興奮、紫は洗練緑はエコというように。

 こうした一般的な連想は、企業やブランド、マーケティングチームが最適なロゴカラーを選ぶ際に参考にできるカラーシンボリズム(色彩の象徴性)チャートやガイドによって強調されることも多い。信頼、創造性、能力、情熱といったブランドパーソナリティの特徴と色を関連づけたシンプルなグラフィックを見たことがあるだろう。

 これらのツールは、ロゴデザインを作成し、その完成度を高める際の人気のリソースとなった。しかし、筆者らが最近実施した調査では、注意すべき点が示された。ツールに依存しすぎると、ブランドのメッセージを歪ませる可能性があるのだ。その主な理由は、顧客が色をどのように認識するかを左右する2つのファクターを見過ごしているからである。

・色は、ポジティブとネガティブの両方の意味を想起させる。カラーシンボリズムチャートやガイドは、ほぼポジティブな印象や連想に注目し、ネガティブなイメージは軽視しがちだ。たとえば、青は、信頼や落ち着きを連想させるが、悲しさや恐怖も連想させる。緑は、成長や健康を連想させることが多いが、毒性や不気味さを連想させることもある。

・色は、それが使われる文脈の中で解釈される。ブランドカラーを選ぶ時は、単に情熱なら赤、信頼なら青、というわけにはいかない。その赤や青がどのように受け取られるかは、文脈、背景、そして全体的なデザインコンセプトによって決まる。カラーシンボリズムチャートは、よくこの点を無視している。ある色がポジティブまたはネガティブなメッセージを発信するかどうかは、全体のビジュアルとの関係、特にその背景色との相互作用にかかっている。

 筆者らは、ロゴデザインに関する意思決定を向上させるために、この2つの重要分野を調査した。デジタルデザインとコミュニケーションで最も頻繁に使われる黒と白の背景でよく使われるロゴカラーがどのように知覚されるかを調べた。また、ロゴのデザインスタイル(抽象か表象か)やフレーミング(枠ありかなしか)といった他のデザイン要素が知覚にどのような影響を与えるかも検証した。

調査結果

 調査は、人がどのように特定の色を、特定の特性や意味と自動的に結びつけるかを評価する12の対照実験と2つのテストで構成されている。合わせて14の調査を、5730人を対象に、37のロゴについて実施した。おのおののロゴは、背景が白の場合と黒の場合(背景色のみ変更)の2パターンについて調査した。

 それぞれの調査では、参加者がロゴを見て受け取った意味や印象について、さまざまな尺度を用いて質問した。以下がその結果である。

1. 背景色は重要である

 調査全体にわたり、一般的に使われるロゴカラーがポジティブな意味、ネガティブな意味のどちらも持ちうることがわかった。消費者の印象は、ロゴの色だけでなく、ロゴの背景が白か黒かによっても左右される。一般的に、背景が黒の場合、伝統的に「ネガティブ」と見なされる感情や連想(攻撃性、危険性、不気味さ、悲しさ、毒性など)を引き起こす。反対に、背景が白の場合、より「ポジティブ」と見なされる感情や連想(楽しさ、優しさ、活気、楽観、信頼など)を引き起こした。