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家族の力学が先行する同族企業は誤った道をたどる
同族企業は、信頼が前提とされ、役割が継承され、感情が深く入り込む環境で経営されている。この親密さは強みにもなりうるが、組織的な構造がなければ脆弱性にもつながる。企業が重大な意思決定に直面した際に家族の力学が指針になってしまうと、期待の不一致、不公平な扱い、あるいは法的曖昧さが生じ、みんなが守ろうと努力しているもの自体が脅かされるのは時間の問題だ。
筆者は同族企業に関する教育やアドバイザリー業務で、この極めて重要なメッセージに焦点を置いてもらうために、シンプルなスローガンを用いている。「個人間の問題となる前に方針を策定せよ」というものだ。
これは単なるガバナンスの理想ではなく、生存戦略だ。これにより意思決定が、人間関係ではなく規則によって推進される。正式な方針が存在すれば、家族は紛争を解決したり、恨みを抱えたりすることなく、事業の成長に集中できる。
これが実際にどのように機能するのかを、正しい行動を学ぶ前に誤った道をたどってしまった実在の同族企業(匿名)の事例を通して探っていく。
岐路に立った一族
ロッシ家は、欧州で3世代にわたってホスピタリティ事業を営んでいた。複数の大陸に高級ブティックホテルを15軒所有し、ブランドを成長させてきた事業は創業者の子どもたちの下で大きく拡大していた。しかし、成功に伴い、状況は複雑化した。
第3世代のメンバーであるジョンが結婚し、その配偶者を従業員として会社に迎え入れたことで、公平性、説明責任、所有権に関する疑問が浮上した。一族の他のメンバーは、ひそかに疑問を抱いた。「ジョンの妻は適格なのか」「誰がその決定を下したのか」「他の配偶者も事業に参画してよいのか」
同時に、兄弟姉妹やいとこたちの間の役割も曖昧になり始めた。第2世代のメンバーがまだCEOの肩書きを保持していたものの、意思決定は変更の正式な承認がないまま、第3世代の親族へと移行が進んだ。ある第3世代のいとこが事業運営を始めると、第2世代のCFOは次第に蚊帳の外に置かれるようになった。他の第3世代メンバーも参画し始め、中には明確な責任を持たない者や、事業に参加すべきなのか、興味を示すだけで役割を確保できるのかわからない者もいた。