大手テック依存から脱却する「協同組合型AI」とは
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サマリー:AI開発は一部の巨大テック企業に支配され、その独占はプライバシー侵害や差別を助長するなど深刻な弊害を生んでいる。この現状に対し、組合員による民主的なガバナンスと共同所有を原則とする「AI協同組合」が、有望... もっと見るな代替モデルとして浮上しつつある。本稿では、すでに農業やデータ管理の分野でAIを公益に適う形で活用する具体的な動きが出始めている点を踏まえ、協同組合が巨大企業の独占にどう立ち向かい、より公平なAIの未来を形づくるのかを解説する。 閉じる

協同組合でAIの独占に立ち向かう

 今日、AI開発は一握りの企業に支配されている。オープンAI、アルファベット、アマゾン・ドットコム、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフトといった企業が、膨大な計算資源、大量の専有データセット、分厚い技術人材層、搾取的なデータ慣行、低コストの労働力、継続的な実験と迅速な展開を可能にする資本力を通じて、独占的地位を築いているのだ。ディープシークのようなオープンソースの挑戦者でさえも、膨大な計算能力と産業規模の訓練パイプラインによって稼働している。

 この独占は問題をもたらす。プライバシーの侵害、コストを最小化する労働力戦略、データセンターから生じる高い環境コスト。人材採用、医療、信用スコアリング、警察活動などにおける差別を助長しかねない、モデル内の明らかなバイアス。これらの問題は、すでに社会的に疎外されがちな人々に影響を及ぼす傾向がある。AIの不透明なアルゴリズムは、民主的な管理と透明性を回避する。加えて、誰に耳が傾けられ、誰が監視され、誰がひっそりと排除されるのかを決定づけてしまう。

 しかし、企業がこのテクノロジーの使用を検討する際には、他の選択肢がほとんどないようにも見える。ゆえに、これらのトレードオフからは抜け出せないように思えるかもしれない。

 だが実は、ほとんど注目されていないものの、非常に現実的な可能性を秘めた別のモデルが形を成しつつある。AI協同組合──すなわち、協同組合の原則に基づいてAI技術の開発やガバナンスを行う組織が、有望な代替手段となるのだ。

 世界中に広がり多様な形態を持つ協同組合の運動は、銀行、農業、保険、製造などの分野で成功を収めてきた。組合員によって所有され統治される協同組合事業は、長きにわたり公共の利益のためにインフラを管理してきた。

 より高度な説明責任を果たし、かつコミュニティを中心に据える形での技術活用を、民主的ガバナンスと共同所有によってどのように具現化できるのかについて、一部のAI協同組合が初期の例を示している。その多くは日々の業務にAIを活用している大規模な農業協同組合であり、たとえばIFFCO(インド農民肥料協同組合)のDRONAIプログラムは肥料散布に、フリースランド・カンピーナは乳製品の品質管理に、フォンテラは牛乳生産の分析にAIを用いている。

 AIの独占に立ち向かうために、協同組合は早急に組織化すべきだ。さもなければ、重要な政治的・技術的進展の傍観者に甘んじることになる。