マーケティングテクノロジーの投資効果を最大化する10の戦略
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サマリー:巨額の投資にもかかわらず、多くの企業でマーケティングテクノロジー(マーテック)が期待した成果を上げていない。ツールの4割以上が活用されていないという現実は、問題の根深さを示唆する。その根源は、テクノロ... もっと見るジーの導入という運用にばかり目を奪われ、それを支える組織の変革が伴っていない点にある。本稿では、企業の自己評価を可能にする「マーテック組織レポートカード」というフレームワークを提示し、戦略との整合性や人材育成など、マーテックの投資効果を最大化するための10の具体的な処方箋を論じる。 閉じる

マーテックへの投資が成果を挙げられていない

 企業はマーケティングテクノロジー(マーテック)に多額の投資を行っているが、十分に活用されておらず、その効果は限定的なものになっている。CMOサーベイがマーケティングリーダー292人に、技術の活用状況について尋ねた。そして、筆者らのチーム(学者2人、コンサルタント2人、CMO1人)は、最良の成果を得られていない理由を分析した。

 マーケティングリーダーたちは、今年の予算の24%をマーテックに投じる計画だと回答した。回答者の3分の1近く(31%)が、マーテックへのマーケティング支出は5年後には55%増加すると答えている。マーテックの影響を受けていない企業はほとんどなく、この予算の増加傾向は、影響力が加速していることを示している。

「いま利用しているマーテックツールは、会社の業績にどの程度の効果をもたらしているか」という質問に対して、マーケティングリーダーたちは7点満点中4.7点と回答した(1=まったくない、7=非常に大きい)。懸念すべきことに、49%が技術が実際にもたらす効果が期待値に達していないと回答しているのだ。また、購入したマーテックツールの44%が未使用のままであることも明らかになった。

 マーテックへの投資が拡大している一方で、そのパフォーマンスにばらつきがあるというこのギャップが大きい状況から、2つの疑問が浮かび上がる。第1に、このギャップの背景にある要因は何か、第2に、どうすれば企業はマーテックに関する活動を体系的に管理できるか、である。調査結果によると、投資とパフォーマンスの乖離は、組織面よりも運用面に重点を置いていることに起因しているとわかった。

マーテック組織レポートカード

 この問題を是正するために、筆者らは、「マーテック組織レポートカード」を提供している。これは、マーテックの有効活用を推進するための「ベストプラクティス」をまとめたものだ。企業の自己評価に基づいて、マーテックの統合を妨げる具体的な障害を特定し、解消するための体系的なアプローチを提供する。企業は、この10のベストプラクティスに基づいて自社のマーテック統合戦略のベンチマークを行い、組織的要素の改善に役立てることができる。

1. 視点を変える──予算以外に目を向ける

 CMOの調査では、マーテックの支出とパフォーマンスの間に相関は見られなかった。支出が多いからと言って、パフォーマンスが向上するわけではないのだ。つまり、リーダーは支出額よりも、どうすればシステムを活用できるかを考える必要がある。

2. 目標を正しく設定する

 リーダーがマーテックを導入する理由はさまざまだ。中には、競合他社が使っているから、最新のマーテックに興味があったから、といった好ましくない動機も散見された。調査では、これらの動機と、会社の目標や戦略との整合、顧客価値の向上など、戦略的な意図に基づく動機とを比較した。

 その結果、戦略的な理由でマーテックを導入した企業のほうが、活用率が20%高く、活用成果は大幅に上回っていた。この差は、戦略的に妥当な動機により、マーテックが単なるマーケティングガジェットではなく、価値ある意思決定のリソースとして位置づけられるためだと考えられる。戦略的重要度の高いものは、一般的に受け入れられやすいものだ。

3. マーテックの社内普及率を高める

 マーテックは、マーケティング部門内で完結しがちだ。しかし通常、マーケティングは社内の他の部門と広く密接に連携したほうが効果的である。