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ポップマートに学ぶ、デジタルネイティブ世代の惹きつけ方
インターネット時代において、コンテンツは豊富なだけでなく、ますます断片的なものと化している。顧客の注意や関心も、毎日消費されるショート動画などのメディアの影響により、断片化・分散化が進んでいる。こうした状況では、消費者向け製品における大規模な予算や開発を伴うイノベーションやマーケティングは採算が合わなくなりつつある。
今日のアテンションエコノミー(関心経済)で育った顧客を獲得するためには、そうした個人の感情的ニーズ、アイデンティティに合わせた柔軟な戦略が求められる。デジタルネイティブの企業事例や行動パターンに関する筆者の研究によれば、キャラクターをベースにしたプレミアム製品の販売で世界的成功を収めた中国の玩具メーカー、ポップマートのような新興企業に貴重なヒントがある。2024年、ポップマートの株価は前年比4倍以上に急騰した。
ポップマートのサクセスストーリーとその顧客層を理解すると、消費財メーカーがデジタルネイティブ世代のブランド認知を高め、経済的な成功を収める方法が見えてくる。
本稿で提供する内容は、B2B事業の経営者にも有用である。デジタルネイティブである意思決定者のニーズを満たす製品を提供する必要があるからだ。この世代は個人消費者であるだけでなく、企業の購買決定に影響を及ぼす存在になりつつある。
若年層へのアピール
ポップマートが最も知られるのは、アーティストがデザインするコレクティブルフィギュアと「ブラインドボックス」と呼ばれるマーケティング戦略である。この戦略では、購入者は自分が特定のテーマのセットの中からどのフィギュアを購入したか、パッケージを開けるまでわからない。これは、さらなる購入意欲をかき立てる仕組みである。ポップマートは、まず2017年に中国でコミックトイ展を開催し、一躍注目を集めた。その後、ラグジュアリーブランドとのコラボレーションを開始し、ヒット商品を次々と誕生させ、世界中に数百店舗を展開した。
2024年には、同社を代表する人形の一つで、独特なアートデザインが特徴のラブブ(Labubu)が東南アジア諸国で何百万人ものファンを魅了した。多くの多国籍企業が狙い、競い合っている市場である。現在、中国本土以外の事業は、ポップマートの総売上高18億ドルのうち、約40%を占めている。
ポップマートの成功要因は、ミレニアル世代とZ世代をターゲットにしたアジャイルな戦略にある。
リアルタイムデータに基づく顧客インサイトの活用
注意が分散化する時代において、企業は消費者からのリアルタイムのフィードバックに基づいて、適切なイノベーションを素早く特定し、促進する能力を向上させる必要がある。そうしたインサイトと、サプライチェーンに関する意思決定やマーケティングリソースの迅速な調整により、若年層の移ろいやすいトレンドを具体的な利益に変換できるようになる。
このようなリソースマッチング能力は、ネットで話題になっていることを見つけ出すティックトックのアルゴリズムに似ている。あるショート動画が注目を集めている(シェア、いいね、視聴完了率により、エンゲージメントが高い)ことを検知すると、自動的にそのコンテンツへのトラフィックを増加させ、プラットフォーム全体での露出を高めるのだ。
同様に、ポップマートは、新シリーズの開発において、市場からのフィードバックをリアルタイムで収集し、デザインの修正を重ねる。ユーザーと強い結びつきを築けるキャラクターができると、製品開発リソースを素早く調整して、若年層の話題をキャッチしにいく。