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経営陣から発信された情報は現場まで届いていない
世界中の企業で、経営陣は戦略的イニシアティブを導入するに当たり、洗練されたプレゼンテーションやコミュニケーション計画の作成に、多大なリソースを投じている。だが、子どもの伝言ゲームと同じで、現場に届いた時には、当初のビジョンとは大きくかけ離れていることが多い。こうした断絶は、単にいらだちをもたらすだけではなく、組織のパフォーマンスに壊滅的なダメージを与える。
あなたが考えた最高の戦略的アイデアを例に考えてみよう。あなたはシニアリーダーとして、変革的なイニシアティブの包括的なメンタルモデルを構築した。ところが、それを文書化する時、意図せず、多面的なコンセプトを直線的なフォーマットに圧縮してしまう。その後の全体集会や幹部会議で、さらに圧縮が進む。
それでもあなたは、部下たちは状況を把握しており、情報の不足を補えると信じているかもしれない。だが、実際には、彼らにはあなたのビジョンの断片しか伝わっていない。こうした情報の劣化は、筆者が「コミュニケーション・リークポイント」と呼ぶもの、つまり、情報が伝わる過程で決定的に重要な意味が失われていくことで生じる。
筆者のチームが複数の業界にまたがる調査を行ったところ、これらのリークポイントに対処するためには、伝統的なコミュニケーション研修以上のものが必要であることがわかった。リーダーは、意味がゆがめられやすい重要な移行ポイントで、ターゲットを絞った介入措置を講じる必要がある。そこで、組織のメッセージングで最もよく見られる3つの断絶ポイントと、その影響を軽減するための構造的な解決策を紹介しよう。
アイデアを文書化する段階
人間はアイデアを総合的に処理し、そこにはつながりや意味合い、ニュアンスが含まれる。これとは対照的に、言語は本質的に順次的で、簡約的だ。第1のリークポイントは、頭の中の先見的な思考が、伝統的な文書化を通じて言葉にされた時、しばしば凡庸な伝達に変わってしまうところである。
その対策として、ステークホルダーが複雑なアイデアの多様な側面を同時に操作できる、没入型の意思決定環境をつくろう。コンセプトのすべての側面(財務予測、顧客インパクトモデル、実施スケジュール、リスク評価など)が同時に表示される物理的またはバーチャルな空間を設けるのである。こうすることで、エグゼクティブは重要な決定を下す前にこれらの空間を物理的に移動し、物事を単純化せず、複雑さに向き合わざるをえなくなる。さらに、ステークホルダーがこうした環境をどのように移動するかを観察して文書化することで、一方向的なプレゼンテーションでは失われていたであろうインサイトを得ることができる。
あるフォーチュン500の製造業企業は、会議室を「戦略的没入空間」に改造し、このアプローチを実践した。そこでは、リーダーたちは新しい市場参入案のさまざまな側面を実際に歩いて確認することができた。その結果、従来の説明中心のプレゼンテーションでは見逃されていたであろう3つの重要な相互依存関係が明らかになった。







