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熟練の技を科学に置き換える
ウォルマートだからといって、絶対的信頼は禁物だ。小売業は、いまも昔も、その非効率的な点では、変わりない。特に、大型チェーン店を展開する小売業者であれば、移り気な顧客の要望を予測し、多種多様の商品を仕入れたうえで、これを各店舗に割り当てる作業が必要である。おまけに、品目ごとに、適正な価格をつけ、適切なセールス・プロモーションをも実施しなければならない。
当然のことながら、需要と供給にはズレが生じ、それも大幅なことが多い。よって、店頭には、顧客の望まない商品が山積みとなったり、お目当ての商品が、品薄となったりするのである。製品ライフサイクルの伝統的モデルが崩れ、大衆市場が細分化するなかで、マーチャンダイジングに関する意思決定は、複雑を極めている。同時に、失敗の際に、払うツケも厳しくなる一方である。
小売業者は、これまで、販売時点情報管理(POS)のスキャナーを筆頭に、新しいコンピュータおよびコミュニケーション関連システムへ、何十億ドルもの大金を注ぎ込んできた。ところが、販売先、価格、売り出し時期と三拍子揃って申し分ない状態で、商品を供給する解決策には至っていない。そのため相変わらず、多大な出費を強いられているのだ。
推定では、顧客が買い求めにきた商品のうち8%は、品切れであり、全商品の3分の1は、値下げ後に販売されている。Kマートだけでも、2001年の第1四半期に、余剰在庫分の4億ドルを評価損として計上しており、当期利益を40%も引き下げる原因となっている。
これは極端な例としても、需要が正確に読めないがために、一定の利益が、常時失われている事態は見逃せない。特に、陳列期間の短い商品──クリスマスカード、コンピュータ、衣類など──を扱う小売業者にとって、問題は深刻である。
ところが、ここにきて、その解決策に希望が見えてきた。精巧なソフトウエアが次々に登場し、仕入れから梱包、価格づけに及ぶ一連のマーチャンダイジングに革命を起こしつつあるのだ。「マーチャンダイジング最適化システム」と呼ばれるこの新手法は、最大限の収益を実現するには、商品の数量、販売場所、価格をいかに設定すべきか、小売業者に代わって決定してくれるのである。
その仕組みは、既存の在庫や売上データに、高性能なデータ処理技術を適用するということに集約される。そして、その結果、需要供給パターンの正確な将来像を、品目ごとに、店舗レベルで見ることが可能となるのだ。最適化ソフトは、いわば、マーチャンダイジングの熟練の技を科学に変革する技術である。