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部下の士気を高める真のリーダーシップとは何か
多くの労働者は不安に駆られ、疲れ果て、士気を失っている。AIが人間の雇用を奪うというニュースがあふれ、CEOは人員削減やコスト削減を進めていると胸を張る。貿易戦争や関税、インフレーションによる経済の不透明性は、労働者の不安を増幅させる一方だ。
数字はそれを明確に示している。2008年以降、世界の企業の従業員エンゲージメントは総じて上昇しているが、2025年4月のギャラップの発表では、依然として21%という数字に留まっている。しかも、この数字は前年よりも低下しており、35歳以下の管理職(経営陣の示す優先課題と現場での実行との板挟みになることが多い集団だ)で最大の落ち込みを見せている。これでは熱意のある従業員も、大きな不安から萎縮して、思いきって発言したり、チャンスを探したり、不快感を示したりできなくなるおそれがある。こうした症状は、組織全体に波及している。不透明感に直面して、組織全体が内にこもり、市場シェアを守ってコストを削減することにばかり夢中になり、独自の成長機会を探すのではなく競合他社の成功戦略を模倣しているのだ。
状況は厳しいが、これはリーダーがその能力を発揮する大きなチャンスでもある。試練の時にも成功するためには、従来とは異なる取り組みが必要であることを、経営幹部やあらゆるレベルのマネジャーが認識しなければならない。賢明な戦略を立てて、素晴らしい戦術を取るだけでなく、チームの感情に細心の注意を払い、将来への恐怖ではなく、自信や、やればできるという精神、そしてポジティブで前向きな見通しを持てるようにすべきだ。
リーダーがそのような勇敢な姿勢を示すには、どうすればよいのか。それは、道徳的な明晰性や献身的な姿勢、そしてプレッシャーの下でも冷静な態度を示すことだ。部下たちに結束すべき大義を示し、重要な価値観とパーパスを体現し、冷静で安定した姿勢を維持することで、部下を鼓舞し、安心させる。
真のリーダーシップとは、部下たちの感情に注意を払い、彼らが実はもっと有能であると感じ、活力に満ちあふれた気持ちにすることだ。米国の作家で公民権運動家のマヤ・アンジェロウの、「人は他人の言動を忘れるが、自分がどのような気持ちにさせられたかは、けっして忘れない」という言葉は、まさにこの状況を指している。
本稿では、このアプローチの実践的な方法を紹介しよう。
明快で共鳴を呼ぶパーパスを伝える
リーダーの仕事は、部下たちが、自分は重要な物事の一部だと感じられる存在意義を示すことだ。
ウェイン・ティンは電動自転車シェアリング会社ライムのCEOに就任した時、「便利な乗り物」という売り込み方をしなかった。二酸化炭素の排出量を削減し、都市の大気汚染を減らして地球を救うことを強調した。中東の配車アプリで、のちにウーバーに買収されたカリームの創業者たちも、タクシー業界を破壊することではなく、移動の自由のない中東の女性たちに、それを与えることを強調した。AI企業アンソロピックの共同創業者であるダリオとダニエラのアモデイ兄妹は、最強の大規模言語モデル(LLM)を構築することではなく、「人類の長期的な利益になるように、先進AIを責任を持って開発・維持すること」をパーパスに掲げた。
これらのリーダーは、決定的に重要なことを理解している。労働者に情熱や責任やプライドを呼び起こすためには、自分たちがつくっているものを説明するだけでは不十分であり、なぜそれが重要なのかを明らかにしなければならない。労働者が自分の物語の主人公になれるように、戦う価値のあるものを示そう。彼らが集団的な探求の一員だと感じられるようにし、組織を共通の価値観を中核とする道徳的コミュニティとして位置づけよう。共通のパーパスのために一緒に逆境を乗り越え、犠牲を払うストーリーを語り、その成功のために個人とチームが果たす特別な役割を強調しよう。






