AIによってコンサルティング企業はどう変わるのか
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サマリー:AIの台頭は、コンサルティング業界の構造そのものを揺るがしている。従来、ジュニアコンサルタントが担ってきたリサーチやモデリング、分析といった業務が、生成AIやデータ駆動型ツールによって自動化されつつあるの... もっと見るだ。その結果、これまでの「ピラミッド型」組織に代わり、より小規模で機動的な「オベリスク型」モデルが台頭している。本稿では、「オベリスク型」モデルの特徴を明らかにし、従来型コンサルティング企業が直面する課題と変革の方向性を論じる。 閉じる

AI時代のコンサルティング業界

 AIがコンサルティングに及ぼす影響についての議論は、両極端に揺れがちだ。AIによってコンサルタントは時代遅れになると言う人もいれば、いっそう不可欠な存在になると主張する人もいる。だが、どちらの見方も、さらに複雑で重要な現実を見逃している。コンサルティングは消えゆこうとしているわけではない。根本から再構築されつつあるのだ。

 コンサルティング業界は何十年もの間、安定した「ピラミッド」モデルで運営されてきた。このモデルでは、幅広い底辺を成すジュニアコンサルタントがリサーチ、モデリング、分析を担当する。そして、戦略を導きクライアントとの関係を管理する、少数の上級リーダーを支える。このピラミッド構造がコンサルティング業界の収益モデルとなり、この専門職のアイデンティティを形づくってきた。

 ところが、AIはこのモデルを根底から覆しつつある。生成AIツール、予測アルゴリズム、統合的リサーチプラットフォームは、これまでジュニアコンサルタントが何週間もかけて行ってきたタスクの自動化を急速に進めている。この変化が加速すると、コンサルティング会社はある選択に直面する。それは、サービス提供モデルを進化させるか、あるいは存在意義を失うリスクに直面するかである。

 本稿執筆者でAIネイティブのコンサルティング会社、ディスラプティブ・エッジのリーダーであるデイビッド S. ダンカンとタイラー・アンダーソンは、現在、この新しいモデルの実験中である。ルーチン的なリサーチ業務の自動化から高度な分析と統合の強化に至るまで、AIツールがどのようにして、多岐にわたるコンサルティングタスクをサポートできるかを探っている。

 こうしたツールによってどのようにサービス提供が加速され、インサイトの質が高まり、コンサルタントが判断力、創造性、クライアントへの深い関与を必要とする業務に集中できるようになるかを調べることが目的だ。3人目の共同執筆者で、AIのガバナンスと倫理という新たな分野の専門家であるジェフリー・サビアーノとともに、私たちは、人材開発やガバナンスなど、コンサルティング会社に不可欠な要素がこの新しいモデルにおいてどのように進化すべきかについても徹底的に検討している。

崩壊するピラミッド

 企業がコンサルタントを雇う中心的な理由は、当面なくなることはない。企業は今後も、社外の特化された専門能力、柔軟なキャパシティ、信頼性の高い検証、そして複雑な課題に対する第三者的視点を引き続き必要とするだろう。

 だが、需要は変わらないとしても、AIは、コンサルティング会社が需要を満たすために使用してきた従来のモデルを揺るがしている。このモデルは、シニアコンサルタントが主導する提案を支えるために、ジュニアコンサルタントが何週間もかけてデータの収集と分析、シナリオのモデリング、スライド資料の作成などを行うことに依存している。今日、AIシステムはそのすべてのタスクを遂行することができ、しかも、よりスピーディかつ低コストで、そして多くの場合、よりうまくこなせるのだ。

 たとえば、マッキンゼー・アンド・カンパニーでは現在、社内向けの専用AIアシスタントLilliが従業員の72%以上によって使用され、リサーチと情報の統合にかかる時間は約30%削減されている。ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、プレゼンテーション用資料を数分で作成するツールDeckster使用し、ベイン・アンド・カンパニーは社内IPでトレーニングされたAIコパイロットSage展開している。