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チームはすべてを同時にこなすことはできない
変化の激しい今日の職場環境において、組織はチームに、すべてを同時にこなすことを期待しがちだ。いま完璧な成果を挙げると同時に、将来も改善し続けることを期待するのだ。しかし、成果と学習の両方を同時に求めるのは賢明なのか。
筆者らの研究結果によれば、答えは「ノー」だ。
この研究では、北米のある大手住宅ローン会社の109のチームを対象に、学習努力と成果を出す努力という2つの目標を追い求めると、チームのパーパスと全体的なパフォーマンスにどのような影響が生じるかを調べた。その結果は意外かもしれない。学習と成果の両方を同時に最大化しようとしたチームは、最もパフォーマンスが低かったのだ。対照的に、学習または成果のどちらかに重きを置き、もう一方への注力を減らしたチームは、仕事の意義をより強く感じ、最終的によりよい結果を達成した。
二重のメッセージの隠れたコスト
多くの場合、パフォーマンス管理の実務とシステムは、「イノベーションと実行」を奨励して、高いレベルの成果を求めつつ、柔軟で実験的であることも期待する。だが、このように学習と成果の両方に同じくらい注力するよう求めると、チームの集中力が薄れてしまう。従業員は、新しいことに挑戦して成長するべきなのか、それともミスを避けて目標を達成するべきなのかと混乱する。
研究対象とした住宅ローン会社のITサポートチームを例に考えてみよう。上層部は「限界に挑戦」し、革新的なテクノロジーソリューションを自由に実験するよう奨励して、学習とイノベーションを強く支援する姿勢を示した。このチームは定期的に、有望なアップグレードや先進的なシステム改善を模索し始めた。ところが、実際には、こうしたイノベーションが全面的に実行されることはなく、貴重なアイデアが中途半端に放置されることがよくあった。
このような事態が生じるのは、このITチームのパフォーマンスが、目先のシステムの信頼性や稼働時間、迅速なインシデント対応に基づいて評価されたためだ。イノベーション(学習)と信頼性(成果)の両方が正式に評価されたため、チームメンバーの中で何を優先するべきかについて不透明性が生じ、日常的に躊躇が見られるようになった。
ITスペシャリストは、単純で容易に解決できる問題(短期的な目標を達成できるような、単純に成果が得られる課題)には迅速に対処する一方、複雑なシステムレベルの問題は避けるようになった。こうした複雑なシステムレベルの問題に取り組むことは、深い分析を要し、長期的な安定性とイノベーションにとっては不可欠だったが、それに取り組めば解決困難な問題を浮上させることになり、パフォーマンス評価にマイナスになりかねないと敬遠されたのだ。こうした優先順位に関する混乱は、フラストレーションや士気の低下、そして重要なシステム改良を遅らせるといった事態に直結した。
この漠然性は、高成績チームが最も重視する「タスクの意義」を損なわせる。目標が明確にされないと、チームは自分たちの仕事がどのような重要性を持つのかが理解できなくなる。筆者らの研究データでは、有意義な仕事をしているという感覚は、チームが実際に優れたパフォーマンスを示すかどうかを予測する重要な指標になる。研究では、パーパスを明確に意識しているチームは、実行力や仕事の質、そして組織目標への全般的な貢献度について、上級管理職から著しく高い評価を受けていた。
パーパスがパフォーマンスに火をつける
では、何が役に立つのか。学習であれ、成果であれ、どちらか一方に重点を置き、もう一方を後回しにするチームは、自分の仕事が有意義だと感じる可能性が高かった。このように優先順位が明確だと、チームはより活力に満ち、エンゲージメントが高くなり、より優れた結果を出す。新しいスキルを習得することに重点を置くにせよ、社内のベンチマークを達成することに重点を置くにせよ、大切なのは明確かつ一貫したパーパスを持たせることだ。
住宅ローン会社では、品質問題に長年悩まされてきたカスタマーサービス部門が、プロセス改善について一般論を語るのをやめ、「迅速な対応」と「初回対応で問題を解決する」という2つの具体的な目標を定めた。リーダーは、この2つの目標について明確な週次目標を設定し、シンプルなチームダッシュボードをつくり、コーチングやボーナスもそれに結びつけた。すると、この明確さは従業員の活力を高め、士気を向上させ、顧客からの評価も急上昇した。焦点を当てる要素を一つに絞ると、チームは明確なパーパスを取り戻し、それがパフォーマンスの向上につながったのだ。





