部下をやる気にさせるリーダーの資質

 役員室を静まり返らせようと思うならば、魔法の一言をつぶやけばよい。「なぜ、あなたがリーダーなのか」と。

 我々は、欧米企業数十社のコンサルタントとして、これまで10年にわたってこの質問をぶつけてきた。反応はいつも決まって、虚を突かれたような沈黙で、聞こえるのは貧乏ゆすりの音だけだ。

 経営幹部が脅えるのも一理ある。彼らは、自分に従ってくれる部下がいなければ何もできないが、このエンパワーメント(権限委譲)の時代においては、そのような部下はおいそれとは見つからないものだ。

 そこで、効果的にリーダーシップを発揮するにはどうすればよいのかを知る必要が出てきた。部下に忠誠を誓わせ、会社の目標に向かわせなければならないのだ。ところが、ほとんどの経営幹部はその方法を知らない。

 とはいえ、彼らを責めるのは酷だろう。とにかく情報が多すぎるのだ。1999年の1年間だけで、リーダーシップに関する本が2000冊以上も出版された。なかには、リーダーシップの教祖とも言うべきモーゼやシェークスピアの話の焼き直し本まであった。

「リーダーシップの真実」なるものを解き明かすアドバイスなら、これまでに嫌と言うほど聞かされている。リーダーにはビジョン、エネルギー、権威、戦略的リーダーシップが必要であるというのである。そんなことは、言われなくてもわかる。

 これらとは別に、我々はある意外な事実を発見した。それは、部下にやる気を出させるリーダーには、共通して4つの資質が備わっている、ということである(図1「リーダーシップにまつわる4つの通説」を参照)。

[第1の資質]自らの弱点を認める

 何かしら弱点を見せることで、近づきやすい人間的な印象を与えている。

[第2の資質]直感を信じる

 行動を起こすタイミングや手順を決める時、かなりの部分で直感に頼っている。彼らは、実体のないソフト・データを収集し、分析する能力に長けているため、いつ、どのように行動するのか、適切に判断できる。

[第3の資質]「タフ・エンパシー」(厳しい思いやりのことを、我々はこのように名づけた)を実践する

 心から──ただし現実的に──部下を思いやり、彼らの仕事に強い関心を示す。