ウェルチの退任は2002年1月に延期されたが……

"Jumpin' Jack Flash"(ジャック・ウェルチはネズミ花火みたいだ)。

 これは1980年代にゼネラル・エレクトリック(以下GE)のジャック・ウェルチ会長に貼られたレッテルである。

 86年末、即断即決の下、ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(RCA)を買収して以来、彼はこのように呼ばれるようになった。

 そのウェルチが慎重に慎重を重ねて選んだ退任予定日「2001年4月1日」の6カ月前にして、何と従業員12万人を擁するハネウェルを450億ドルで買収した。このハネウェル買収によって、彼は引退を「2002年1月」まで延期し、両社の統合を滞りなくやり遂げるという決断を下した。

 今回の一件は、ウェルチの「遺産」を貶めるものではない。むしろ20年間にわたる彼の流儀と見事に一致している。楽観的だが、いつもいろいろな計画で頭は一杯、準備万端整え、チャンスと見るや電光石火のスピードで飛びつく。だからと言って、入念に準備された計画をぶち壊してしまうわけでもない。これぞウェルチ流である。

 結局のところ、当初の予定よりも長くなったコーチングの期間に、新たなきらめきが加わったにすぎない。

 次のマネジメント・チームは、ウェルチという補助輪やセーフティネットなしにGEを率いていかなければならないが、その猶予期間が延びて、うれしいような迷惑なような複雑な気持ちでもあるだろう。

 ウェルチが明言したように、今回の続投はなにも会長職に固執したからではない。彼自身、「歳を取って、もうろくした会長が権力の座に居座ることほど悪いことはない」と言い切っている。引退の延期に対する批判に、彼は次のように答えた。

「今回の件で、いろいろと取り沙汰されていることは承知している。だが、権力を手放せない、おろかな老いぼれが会長の座にしがみついているわけではなく、仕事に夢中になりすぎて家に帰れなくなったわけでもない。そんな憶測こそばかげている。