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本稿筆者のトマス・チャモロ=プレミュジックは、新著Don't Be Yourself: Why Authenticity Is Overrated (and What to Do Instead) で、リーダーがありのままの自分をさらけ出すことが逆効果になる場合があるという、一見すると意外な現象について詳しく論じている。本稿は、この書籍の一部を抜粋・再編集したものである。
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オーセンティシティ(ありのままの自分でいること)という用語は、もともとはもっぱら実存主義哲学の分野で用いられるニッチな言葉だったが、最近は、自己啓発書の記述や企業文化のスローガン、リーダーシップ関連のマニフェストなどで過度に推奨されているきらいがある。
筆者が新著Don't Be Yourself: Why Authenticity Is Overrated (and What to Do Instead)で指摘したように、西洋の文化では特に、「自分らしくあれ」「自分の心に忠実に行動せよ」「自分の価値観を裏切るな」「ありのままの自分で仕事に臨め」といったことがしきりに言われる。リーダーシップ関連のセミナーに参加したり、ビジネス書を読んだり、仕事関連のポッドキャストを聞いたり、リンクトインを閲覧したりすると、このようにオーセンティシティの重要性を説く善意のアドバイスにしばしば遭遇する。
オーセンティシティを追求することは、ある面では理にかなっている。長年にわたり蓄積されてきた研究の数々によれば、オーセンティシティは自尊心と関連性があり、自分にオーセンティシティがあると感じている人はウェルビーイングの水準も高い場合が多いようだ。具体的には、そのような人たちは、ポジティブな感情を抱き、活力がみなぎり、リラックスしており、フロー状態を経験しやすいことがわかっている。
端的にいえば、自分が常に一貫した行動を取り、みずからの自己認識に沿って振る舞っていると感じている時、人は内面の一貫性と調和を実感し、自己肯定感が高まりやすい。逆に、自己認識に反する行動を取っている人は、自分を偽っていると感じて罪悪感を抱く。そしてその結果として、自尊心にも悪影響が及ぶ。
しかし、問題は、自分がありのままの自分でいられると感じていても、周りの人たちから、才能があるとか、仕事ができる人物だと評価してもらえるとは限らない、ということだ。要するに、オーセンティシティを貫くことには、主観的なレベルでは恩恵があるが、それを理由に、職場のメンバーとして、あるいはリーダーとして高い評価を得られる保証はない。
55件の独立した研究をメタ分析した最近の研究によると、リーダーシップの発揮やその成果、あるいは問題解決志向や人間関係志向のリーダーシップの実践と、みずから認識しているオーセンティシティの度合いとの間には、正の相関関係は見られない。大きな意味を持つのは、あくまでも印象マネジメントなのだ。
自分がオーセンティシティを貫いて行動していると思えれば気分がよいかもしれないが、リーダーとして成果を挙げるためには、周囲の人たちに好印象を抱かせ、状況に応じて自分の行動を調整することのほうが重要になる。仕事の場で成功できるかどうかを左右するのは、ありのままの自分を貫いているかどうかではなく、どこまでは自分らしく振る舞うことが許され、どこからは周りの人たちに対する義務を尊重すべきかを見極められるかどうかなのだ。
この研究によると、印象マネジメントをうまく実践できている人は、リーダーとしてのパフォーマンスが高いだけでなく、オーセンティックなリーダーだと、周囲の人たちから評価されやすいという。






