CEOは現場に深く関わるべきか

 ビジネスリーダーと話をする時に、筆者らが理解しようとするのは次の問いだ。優先すべきタスクが山積みで、一日に使える時間が限られている中、何に取り組むかをどのように決めているのかである。

 多くのCEOの間には、大まかな共通認識がある。上級経営幹部は、パーパス、ビジョン、戦略、目標、リソース配分、有能なチームの編成といった「何をするか」に注力すべきだという認識である。そうしたハイレベルな優先事項に充てる時間を確保するために、彼らは日々の業務上の判断、すなわち「どのように行うか」については部下に任せなければならない。

 マネジャーの役割について、最も著名な経営思想家であり大きな影響力を持つピーター・ドラッカーは、経営者は何でも屋であってはならない、全体を設計する建築家であるべきだと述べている。

 筆者らの一人であるノーリアが共同で率いるハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の新CEO向けワークショッププログラムでも、教授陣はその地位に就いたばかりの人たちに向けて、業務の遂行を超えて全体像を描くことに重点を置くように諭す。「真のCEOになるには、COOのように振る舞ってはいけません」と彼らは言う。業務の細かい部分に深く関与しすぎるリーダーは、マイクロマネジャーだと批判されるものだ。

 にもかかわらず、世界トップクラスの業績を誇る企業のいくつかを調べてみると、それとは相反する行動が見られる。これらの企業では、CEOや上級経営幹部が「どのように行うか」、つまり従業員の仕事のやり方に深い関心を寄せている。彼らは中間管理職や現場で働く従業員の仕事のやり方を観察し、従業員がタスクを遂行する際に用いる指針となる体制や行動モデルを設計するために、膨大な時間を費やしているのだ。

 筆者らは本稿のために、極めて高い業績を誇る4つの企業について徹底的な調査を行った。アマゾン・ドットコム、ダナハー、レレックス、トヨタ自動車である。実際に各社に足を運び、20人以上の経営幹部にインタビューを行い、これらの企業を成功に導いた要因について書かれた多くの資料を読み込んだ。

 表面上は、これら4つの企業には共通する特徴がほとんどない。3つの異なる大陸の異なる業界で事業を展開し、その歴史も同族経営、創業者主導の経営、外部から招聘されたトップによる経営体制とさまざまだ。そのうち1社はインターネット時代に誕生し、別の1社は1980年代前半に誕生し、残りの2社は100年以上前に創業した。

 共通点は、CEOが何を優先すべきかについて、リーダーが通常とは異なる考えを持っていることだ。筆者らの調査では、特に4人のリーダーに注目した。まず、アマゾンを創業して以来、27年間にわたって同社を率いたジェフ・ベゾスである。2人目は、2000年から2014年までダナハーを率いた後、2018年から2024年までゼネラル・エレクトリック(GE)を舵取りして目覚ましい業績回復に成功し、現在もGEエアロスペースの会長兼CEOを務めるローレンス(ラリー)・カルプ、3人目は、2004年からレレックスの当時の最大部門を率いて、2009年以降は同社のCEOを務めたエリック・エングストロームだ(2020年に逝去)。そして最後は、1960年代から1990年代にかけてトヨタを率いた豊田英二である(2013年に逝去)。

 これらのリーダーは、CEOは第一に権限委譲者であるとするモデルを否定し、CEOは仕事の進め方を形成するうえで不可欠な参加者の一人だと考えている。

 たしかに、自分は現場の業務を気にかけていると主張するCEOは多い。だが、こうした高い業績を誇る企業のリーダーの特徴ともいえるのは、彼らが従業員の行動や業務体制に常に細心の注意を払っている点である。