なぜ好業績のリーダーほど、組織のゆがみを見落とすのか
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サマリー:CEOが対外的にどれほど成功を収めても、それだけで社内の圧力から逃れられるわけではない。優れたCEOと偉大なCEOの違いは、努力の量ではなく、「社内」「社外」「ガバナンス」という3つの領域のうち、どこで圧力が最... もっと見るも高まっているかを察知できるかどうかにある。本稿では、ステークホルダーを早期警報システムとして活用し、システム全体に負荷がかかる前に隠れた摩擦を見つけ出し、戦略的に対処するための4つの手法を紹介する。 閉じる

好業績でも取締役会で酷評されたCEOの盲点

 筆者の元クライアントであるネイサン(仮名)は、CEOというポジションに就くのは初めてだったにもかかわらず、その会社にとって数年ぶりとなる好業績をもたらした。収益は拡大し、顧客は満足し、彼に対する経営幹部からの忠誠心は非常に厚いものだった。

 ある時、取締役会が開かれた。「目覚ましい業績を達成しましたね」と、彼らはネイサンに言った。「しかし長期的なビジョンが見えない。事業を拡大させようとしているのか、それとも全力疾走しているだけなのか。長期戦略はどこにあるのか」

 ネイサンはショックを受けた。「取締役会を終えた時は、何もかもわからなくなった」と彼は言う。「私はこの会社を率いるのにふさわしい人間なのか。どうしてそのことに指摘されるまで気がつかなかったのか。リカバリーできるのか。私をトップに選んだのは彼らなのに、どうしていま頃、私の能力に疑問を投げかけるのか」

 ネイサンは何カ月もかけてオペレーションを最適化し、話題づくりに奔走した。ただ、取締役会のことは、「ガバナンスのための形式的なもの」だと見なしていた。ところがいま、取締役会の示した懐疑的な見方が、ネイサンの勢いを削ごうとしていた。

 ネイサンは残酷な現実を学んだ。対外的にどれほど成功していても、社内の圧力からは逃れられないのだ、と。

 成功するCEOは、こうした摩擦が火を噴く前に、目を配ることを学んでいる。そのためには、3つの異なるリーダーシップの側面に同時に対処する必要がある。いずれも独自のスキルと意識、エネルギーを必要とするものだ。

成功するリーダーシップの3つの側面

 社内面では、CEOは会社をうまく運営する責任がある。彼らが答えなければならない重要な問いは、「我が社の人材と文化、そして業務執行は、整合性が取れているか」だ。この面に対する圧力は通常、チーム間の摩擦や予期せぬ離職、プロジェクトの停滞、士気の低下、定着リスクとして表れる。

 社外面では、CEOは市場に対して会社の態勢を整える責任がある。ここで問うべきは、「顧客やメディア、投資家、そしてパートナーは、我が社を未来の企業と見なしているか」だ。この面に対する圧力は通常、競争上の脅威、顧客離れ、メディアにおける懐疑的な見方、株価の下落といった形で表れる。

 ガバナンス面では、CEOは部外者のように振る舞う強力な社内関係者と連携しなければならない。主な問いとなるのは、「取締役会のメンバーや大株主、規制当局は、経営陣の方向性を信頼しているか」だろう。この点における圧力は、返答の遅れ、鋭い質問、そして極端な場合、公開書簡という形で表れる。