グーグルはAI検索時代をどう戦おうとしているのか
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サマリー:「検索」といえばグーグル――長年その代名詞として君臨してきた検索の巨人が、いま大きな転換点を迎えている。生成AIの進化がもたらしたAI検索の台頭によって、人々の情報探索の入り口が徐々に変わりつつある。「グ... もっと見るグるよりもAIに聞く」というユーザーの声が広がるなか、グーグルは自らの主戦場である検索ビジネスをどう守り、どう進化させようとしているのか。グーグルを傘下に擁するアルファベットの財務分析とともに、グーグルの「AI検索時代の戦い方」を読み解く。 閉じる

急伸するAI検索

 生成AIに関するニュースを見ない日はないというくらい、近年の生成AIの進展には目を見張るものがあります。私自身、生成AIの最新情報を日々キャッチアップするのに苦心しています。

 実際、生成AIの普及スピードはすさまじいものがあり、私の周りでも、とりわけSNS上では「最近ではほとんど検索しなくなった。代わりに生成AIに直接聞くことが増えた」というコメントをよく見かけます。

 このことを裏づけるのが図表1です。これは、グーグルでの検索と生成AIでの検索のトラフィックを比較したものです。黄緑色はChatGPT経由の検索を示しており、2024年4月以降、明らかにトラフィックが増えています。

 こうした状況を見ると、気になりませんか。これまで長年にわたって「検索」を軸に事業を伸ばしてきたグーグルは、この先大丈夫なのだろうか、と。

 もちろん、グーグルもGeminiという生成AIサービスを擁しています。生成AIサービス市場のシェアで首位を独走するのはOpenAIのChatGPTですが、Geminiの性能もこれに負けず劣らず素晴らしいという話も聞こえてきます。

 ですがグーグルにとって、Geminiを伸ばすということは、自身がこれまで伸ばしてきた検索ビジネスとカニバリゼーション(共食い)を起こしかねないリスクをはらんでいることに他なりません。従来の検索市場が今後徐々に縮小していくことが予測されるなか、グーグルは競争力を維持し、高めていくことができるのでしょうか。

 そこで今回は、グーグルの親会社であるアルファベットを取り上げることにします。図表2に示す通り、アルファベットの傘下にはグーグル以外にも複数の企業が存在しますが、後で見るように、アルファベット全体の売上の99%はグーグル関連のセグメントによるものです。

図表2
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 出所:編集部作成。

 以降ではアルファベットの財務状況を分析しながら、同社の強みはどこにあるのか、今後どのような戦略を取ることが予想されるのかを考察していきます。

売上の7割超を稼ぐ広告事業

 まずはアルファベットの過去10年間の売上高推移を見ていきましょう(図表3)。直近の本決算である2024年12月期(以下、FY2024。以降同様に、12月期は「FY」と表現する)は、売上高3500億ドル、営業利益は1123億ドル、営業利益率は32%となっています。