グーグルがAI検索の先に見据えるクラウド戦略
hapabapa/iStock
サマリー:長年アルファベットの収益の中核を担ってきたGoogleネットワーク広告は減収傾向にある一方、同社は次の成長エンジンとしてクラウド事業への投資を加速させている。生成AI「Gemini」、AIインフラ、データ分析――。検... もっと見る索の覇者はいま、AI時代に主戦場の一つとなるクラウド領域で、先行するAWSやAzureとの戦いに挑んでいる。潤沢なキャッシュフローを武器に、AIとクラウドの融合によって自らの強みを強化しようと目論むアルファベットの戦い方を、財務分析を交えながら追う。 閉じる
▶前回記事「グーグルはAI検索時代をどう戦おうとしているのかを読む

Googleネットワーク減収の背景にあるもの

 前回は、アルファベットの“屋台骨”ともいえる広告事業の3部門のうち、Google検索とYouTube広告については売上高が堅調に伸びていることを見てきました。

 一方、3つ目のGoogleネットワークについては、2022年12月期(以下、FY2022。以降同様に、12月期は「FY」と表現する)をピークに売上高が下がり続けているのが気になるところです(図表1)。いったい何が起きているのでしょうか。

図表1
拡大する
出所:アルファベット各年のForm10-Kより筆者作成。

 アルファベットはFY2025第2四半期の四半期報告書(Form10-Q)で、その要因としてインプレッションの減少を挙げています[注1]。インプレッションとは、ユーザーの画面に広告や投稿が表示された回数のこと。検索結果に記事タイトルが表示された回数や、SNSのタイムラインに広告が表示された回数を知る際に使う指標です。

 アルファベットの報告によれば、このインプレッションが前年同期比(1〜6月の6カ月間)で5%も減少しています(図表2)。その結果、Googleネットワークの売上も下がってしまっているのです。

図表2
拡大する
出所:アルファベット FY2025Q2  FORM 10-Qより抜粋。

熾烈極める消費者の可処分時間の奪い合い

 アルファベットのインプレッションが下がっている理由――もう皆さんもピンと来たと思いますが、それは人々がPCやスマートフォンで調べるもの、見るもの、見る時間の総量が変わってきているからだと予想されます。

 近年多くの人が、ウェブサイトのページよりも、InstagramやTikTokといったSNSや、ネットフリックスのような動画サービスに時間を費やすようになってきています。誰にとっても1日24時間という時間の総量は変わりませんから、SNSやストリーミングサービスに消費者の時間を奪われれば、ウェブサイトの滞在時間はおのずと減ってしまいます。

 また、広告主にしてみれば、なるべく消費者で賑わっている場に広告を出稿するのは当然の判断ですから、各社の広告宣伝費はSNSやストリーミングサービスなどへ向かう傾向が増します。