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斬新なアイデアはどこで消えるのか
多くの企業は、競争力を維持し、新しいビジネスを牽引する手段としてイノベーションを重視する。価値あるアイデアはトップダウンで生まれる場合もあるが、顧客や業務プロセス、生データと直に接する最前線の従業員が、ユニークで精緻なインサイトをもたらすこともある。
しかし、経営陣にとってイノベーションが優先事項でも、アイデアはまず、中間管理職に認められなければいけないことが多い。この階層のマネジャーが、新しいコンセプトには発展させる価値があるかどうかを判断するのだ。経営幹部から見れば、このプロセスは効率的かもしれない。マネジャーは部下のことを知っていて、現場に近く、チェック機能を持つことで経営幹部の時間を節約してくれる。だがこの段階が、最高のアイデアがトップに届くことを阻んでいないか。もしそうだとしたら、それはどのように起きているのか。
筆者らは最新の研究で、従業員のアイデアに社会的要素が与える影響を調べた。とりわけ、マネジャーがある従業員のアイデアを支持した時、そのマネジャーや従業員の地位(シニアリーダーやピアマネジャー、若手従業員から見て)は上がるのか、あるいは下がるのかを調べた。その結果、マネジャーがクリエイティブなアイデアを支持すると、そのマネジャー(と発案した従業員)に対する同僚や部外者やシニアリーダーの見方が変わること、そしてマネジャー自身もそうしたダイナミクスを認識していることがわかった。つまり、アイデアを上層部に伝えることにはリスクが伴うことを、マネジャーは無意識のうちに予期していた可能性がある。そこで、マネジャーたちが何を懸念しているのかをリーダーが理解し、貴重なアイデアの成長を妨げる対人関係上の障壁を除去・回避する方法を共有すべく、筆者らの研究結果を紹介しよう。
研究
最初の4つの実験では、マネジャーが従業員のアイデアをサポートするシナリオ(そのアイデアが成功する場合と失敗する場合の両方)を米国の実験参加者に示した。すると、そのアイデアが成功した場合、従業員とマネジャーの両方のステータスが上がる(周囲からのリスペクトや自発的な服従と定義される)ことがわかった。ただし、従業員のほうが上昇の幅は大きかった。つまり被験者から見て、マネジャーが従業員に対して持っていたステータス上の優位が失われたということだ。
マネジャーがサポートしたアイデアが失敗すると、マネジャーと従業員の両方のステータスが低下した。この時、マネジャーにおけるステータスが低下した幅は、成功したアイデアをサポートした場合のステータスの上昇した幅よりも大きかった。つまり、マネジャーが従業員のアイデアをサポートすると、それが成功するか失敗するかにかわらず、何らかの形でステータスが低下する。従業員に対するステータスの優位を失う場合もあれば、ステータス全般を失う場合もある。
フォローアップ研究では、アイデアが失敗すると、成功した時よりも、責任者探しが厳しくなることもわかった。このことは、因果関係の評価や結果の大きさに関する数十年来の研究と一致する。失敗した場合、従業員とマネジャーの両方が原因と見なされるが、成功した場合は、誰を称賛すべきかを見極める努力はあまりなされない。
むしろ、あるアイデアが成功した場合は、真っ先に思いつく最も明白な原因がある。すなわちアイデアを支持したマネジャーではなく、そのアイデアについて、より大きな「当事者意識」を持つとみなされる発案者だ。筆者らはこれを、「アイデア承認者のジレンマ」(Idea Endorser’s Dilemma)と呼ぶ。なぜなら、マネジャーは従業員のアイデアをサポートしたいと思っても、そうすれば何らかの形でステータスを失う傾向があるのだ。
5つ目の実験では、マネジャーがアイデアを評価する時、このダイナミクスを考慮に入れていることがわかった。具体的には、従業員のアイデアを承認した(そしてそのアイデアが成功または失敗した)場合と、従業員のアイデアをいっさい承認しない場合、同僚たちが見る自分のステータスにどのような変化が生じるかを、600人のマネジャーに予測してもらった。







