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仕事による燃え尽きではない現代の「疲れ」
午後6時半、あなたは朝8時から立て続けに会議に出ている。メールの受信トレイには未読メッセージが137件、スラックの通知も3桁に達し、開いている3つのダッシュボードには、明日までに確認の必要なデータがある。またいつもの空虚感が襲ってくる。肉体的な疲労や仕事による燃え尽きではなく、明らかに現代特有の枯渇感だ。それは、研究でも認められた「デジタル疲れ」である。
従来の燃え尽き症候群と異なり、デジタル疲れは、劣悪なマネジメントや有害な職場文化とは無関係に起こる。健全に機能している組織や、支援的なリーダーシップ下でもはびこる。それは、我々が業務の簡便化や効率化のために取り入れたツールに由来して起こる。筆者は20年以上にわたり、1万2000人以上のナレッジワーカー(知識労働者)を対象に実施した調査から、この増大する危機の背後にあるパターンと、リーダーがいますぐ実行すべき、エビデンスに基づく8つのルールを導き出した。
デジタル疲れの原因は何か
デジタル疲れは、機器そのものによって生じるわけではない。むしろ、そうした機器を介した情報や人とのつながり方が、人間の認知構造や感情エネルギーを根本的に損なうのである。デジタルでやり取りする際、3つの力が連動して働き、利用者のエネルギーを消耗させる。
第1に、これまでにないほど集中が中断される。メールやスプレッドシート、チャット、ビデオ通話などの間でたえず注意を切り替える際、脳は異なる神経領域に繰り返し血液を送り直さなければならない。現代のナレッジワーカーは、1日に1200回近くこの切り替えを行い、そのたびに神経系の調整に数秒を必要とする。さらに重要なことに、この切り替え時には、研究者の言う「注意残余」(attention residue)が残り、次のタスクのパフォーマンスに最大23分間影響を及ぼすという。
第2に、文脈の欠落により、たえず推測を強いられる。言葉の足らないメールや、予期せぬ会議の招待を受け取ると、人はその情報を処理するだけでなく、その意図や感情、状況を推測して、空白を埋めながら積極的に意味を構築しようとする。この推測には、エネルギーを大量に消費する前頭前野が用いられるが、もともとこの領域は時々の社会的対応のために発達したのであり、終日仕事で使うためではない。
第3に、デジタルのやり取りでは、対面でのやり取りで働く調節の手掛かりが提供されないまま、強い感情反応が引き出される。複数の研究によれば、デジタルコミュニケーションは、対面での交流と同じように扁桃体を活性化させるが、感情の強度を緩和する非言語的信号が伴わないため、感情が高まった状態が長く続き、エネルギーの余力を奪っていくのである。
とはいえ、これらの要因が必ずしもデジタル疲れにつながるわけではない。機器との関わり方を変えることができれば、仕事や私生活にあふれる消耗感を防ぐことができる。
デジタル疲れを防ぐ方法
1. 使用するツールを半分減らす
デジタルツールの急増は、経営幹部の疲労の要因として最も認識されていないものの一つだ。平均的なナレッジワーカーは現在、2000年代初頭の4倍以上にあたる34ものデジタルツールを使用している。この増加によって、日常的なコンテキストスイッチだけでなく、認知科学者が「モダリティシフト」(modality shift)と呼ぶ、根本的に形態の異なるやり取りの間の切り替えが起こり、神経系の包括的な再適応を要する。
中規模ソフトウェア会社の最高マーケティング責任者であるアリシアを例に取ろう。調べたところ、彼女は41のデジタルツールを使用していた。そのうちの約30%は機能上、他で代用できるものだった。
この問題の対処には、まず使用しているデジタルツールの棚卸しをする。これを実行した結果、アリシアは18ツールの使用を完全にやめ、別の12ツールは週1回のみの使用に限定することにした。必須でないツールへのアクセスをしにくくするために、デスクトップからショートカットを削除し、プッシュ通知をオフに設定した。こうした変更でコンテキストスイッチが70%近く減少し、アリシアは1日約2時間を取り戻し、疲労感が劇的に減ったことを実感した。







